投稿日:2022年1月28日 | 最終更新日:2023年10月7日
住宅ローンは怖い!?
住宅ローンを利用して家を買うことは、家を担保に数千万円というお金を借入し、20年、30年という長い時間をかけて返済することです。
ですので、住宅ローンが怖い、不安と考えられる方もいらっしゃると思います。
「どれくらいの人が無理なく完済できてるの?」
「自分にとって無理のない住宅ローンの借り方は」
この記事ではこのような疑問について解説しますので、住宅ローンの不安解消、また住宅ローン選びの参考にして頂ければと思います。
- 住宅ローン返済、完済の現実
- 住宅ローン返済がつらい時の対処法
- 住宅ローンの不安を解消する4つの方法
住宅ローン返済・完済の状況
住宅ローンを借入した人は、どれくらいの人が無理なく完済できているのでしょうか、完済期間含め解説します。
住宅ローン返済が困難な割合
フラット35(住宅金融支援機構)が発表しているリスク管理債権のデータがあります。
リスク管理債権
①破綻②延滞③3か月以上延滞④貸出条件緩和という返済ができない、または困難な状況にある債権
額を合わせたもの
年度 | リスク管理債権の割合 |
---|---|
平成27年度 | 5.12% |
平成28年度 | 4.52% |
平成29年度 | 3.94% |
平成30年度 | 3.49% |
令和元年度 | 3.20% |
図表1は、債権額ベースでみたリスク管理債権の全体に占める割合です。
概ね3~5%で推移していますが、このデータは住宅金融支援機構のもので、他民間金融機関を合わせると、恐らくもう少し低くなると考えられます。
仮に3%と考えた場合、債権額ベースですが残り97%の人は返済を続けられているということになります。
この数字を高いか低いか感じ方は人それぞれですが、住宅ローンという長期間の返済を伴う借入について、殆どの方は返済を続けられていることは間違いありません。
住宅ローン完済までの期間
住宅ローン完済期間はどのようになっているのでしょう。
当初の借入期間と完済期間を比較すると、繰上完済をする人も少なくないことが分かります。
図表2は、住宅ローン契約当初の貸出期間を表したものです。
貸出期間 | 全体の割合 |
---|---|
30年超え35年以下 | 23.6% |
25年超え30年以下 | 44.4% |
20年超え25年以下 | 16.0% |
15年超え20年以下 | 12.4% |
10年超え15年以下 | 3.1% |
返済期間が25年を超える割合が68%です。
一方、図表3は、完済までの期間を表したものです。
完済までの期間 (借り換え含む) | 全体の割合 |
---|---|
30年超え35年以下 | 0.7% |
25年超え30年以下 | 5.5% |
20年超え25年以下 | 15.8% |
15年超え20年以下 | 18.5% |
10年超え15年以下 | 43.2% |
このデータには返済期間中の借り換えによる完済も含まれているため、実際は完済までの期間はもう少し長いと考えられます。
その点踏まえても、25年以内で完済している割合が75%を超えています。
つまり、当初は30年、35年の返済期間で借入しても、実際はそれよりも早く繰上げ完済をしているということです。
相続や資産運用の収益などの収入で完済、あるいは借入当初から退職一時金など繰上げ完済を見込んだ返済計画を立てている場合もあります。
また、ボーナス時や定期的にコツコツと一部繰上げ返済を続けた結果、当初より前倒しで完済もあるでしょう。
2020年度 住宅ローン貸出動向調査
(住宅金融支援機構)
売却あるいは団信で住宅ローン完済
住宅ローンを完済する方法として、途中、家を売却して売却収入で完済する場合や団体信用生命保険を利用する場合もあります。
家を売却して完済
転勤や住み替えなど状況はさまざま考えられますが、家を売却して住宅ローンを完済するケースもあります。
ただ、このときの状況として2つ考えられます。
■売却収入がその時点の住宅ローン残高を上回る
(いわゆるアンダーローンの状態)
■売却収入では住宅ローンを完済できない
(いわゆるオーバーローンの状態)
アンダーローンの状態であれば問題ありませんが、オーバーローンで売却するためには別途自己資金が必要となります。
つまり、借入時の資金計画や購入する家の資産性が住宅ローン完済に影響するということです。
団体信用生命保険の活用
あまり考えたくはありませんが、契約者が亡くなられた場合、団体信用生命保険によって住宅ローンは完済されます。
団体信用生命保険(以下団信)
住宅ローン契約者が死亡、高度障害になった場合に、住宅ローンの返済義務がなくすための保険。
残された家族に大きな負債(借金)を残さないための保険。
また、一般の団信以外にガンや3大疾病、8大疾病などいろいろな特約付団信があります。
給付条件(診断や所定の状態)に該当した場合、住宅ローンが0になる、2分の1になる等があります。
つまり、選ぶ住宅ローン商品によって、病気になったあとの住宅ローンの負担が大きく変わるということです。
低金利時代で金利差が少ない中では、団信特約を含めた住宅ローン選びが大切です。
- 金利に含まれている
- 上乗せに金利が必要
- 保険料として毎月支払う
保障内容と金利負担をしっかりと判断する必要があります。
住宅ローン返済がつらいときの対処法
ここまで住宅ローン完済する前提でしたが、返済途中、会社の業績悪化や病気などで収入が減るといった可能性もあり、返済が厳しくなる状況も考えらます。
非常に 負担感あり | 少し 負担感あり | あまり 負担感なし | |
---|---|---|---|
注文住宅 | 10.8% | 53.8% | 27.2% |
新築分譲戸建て | 10.1% | 59.2% | 25.9% |
既存(中古)住宅 | 5.8% | 51.1% | 35.0% |
図表4は、住宅ローン返済の負担感に関する調査結果です。
非常に負担ありが5~10%、少し負担感ありが50~60%と両方を合わせると約6~7割の方が負担感を感じており、あまり負担感がない割合より大きくなっています。
令和元年度住宅市場動向調査
(国土交通省)
では、住宅ローンの返済が厳しくなった場合、どういった方法がとりうるのでしょうか。
早めに金融機関へ相談
住宅ローン返済が難しい、またはそれが予測される場合、なるべく早めに借入先の金融機関へ相談へいくべきです。
返済猶予や返済条件の見直し(返済期間の延長や月々の返済額の調整など)含め、どういった手段がとれるか確認が必要です。
金融機関としてもできるだけ返済を続けてもらいたいことは同じです。
病気などで返済が難しくなった場合、特約付き団信が使えないか給付条件も併せて確認しましょう。
一定期間返済が免除されたり、住宅ローン債務が1/2あるいはなくなる場合もあります。
自宅の売却
それでも住宅ローン返済が難しい場合は、自宅の売却も考える必要があります。
このとき、売却収入で住宅ローンを完済できれば、次の生活にも移行しやすいです。
一方、売却収入では住宅ローンを完済できない、完済するための資金が準備できない場合もあります。金融機関の同意のもと任意売却を考えることになります。
任意売却
住宅ローン返済が困難な場合、自宅の売却収入で住宅ローン残債を完済できなくても金融機関の同意
を得て売却する方法
任意売却後の住宅ローン残債は、返済義務がなくなるわけではありません。
住宅ローンを滞納し続け競売手続きに移行した場合、相場よりかなり低い金額で売却せざるを得なくなる可能性が高くなります。
できる限り任意売却ですすめるよう早めに手を打つことが大切です。
他に、リースバックなど自宅に住み続けることができる方法もありますが、何が最善の方法かしっかり検討する必要があります。
住宅ローンの不安を解消する4つの方法
どうすることもできない外部要因もありますが、住宅ローン完済までの状況踏まえ、住宅ローンの不安を解消するためにできることは何でしょうか。
維持費含めた返済負担率を把握する
返済負担率
年収に対する年間の住宅ローン返済額が占める割合
返済負担率は、借入時の住宅ローン審査においても重要な基準の1つですが、借り手側も無理のない返済額を知るうえで重要なものです。
年収や手取りの25%、20%以内など考え方はさまざまありますが、返済負担率を考えるとき諸費用含めて考えることも大切です。
- 固定資産税
- 管理費・修繕積立金
- 将来の修繕費用の積立
- 火災保険料 など
マンションか戸建てかでも維持費は変わります。
住宅ローン返済以外の維持費も含めた住宅コストが、収入に対してどれくらいの割合を占めるかをシミュレーションすることで、購入後の負担感をイメージしやすくなります。
フルローン・借り過ぎのデメリットを知る
フルローン
物件価格以上の住宅ローン借入をすること
つまり、頭金なし、もしくは諸費用含めて借入する資金計画ということです。
今では諸費用含めた借入も可能ですし、物件価格にもよりますが、フルローンで借りる場合のデメリットもあります。
- オーバーローンになりやすい
- 金利上昇の影響が大きい
前述の通り、借入後もオーバーローンの状態が続くと、売却する際の売却収入では住宅ローンを完済できないという状況になります。
変動金利の上昇をシミュレーションする
令3年度 民間住宅ローンの実態に関する調査(国土交通省)によると、新規貸し出し額の76.2%が変動金利となっており年々増加傾向にあります。
変動金利タイプの金利水準は低いですが、金利上昇の可能性もあります。
住宅ローン返済が怖いが変動金利を選びたいということであれば、金利上昇した場合の家計への影響もシミュレーションしておくことで不安を軽減できます。
収入に対しての借入金額が大きければ金利上昇の影響も大きくなります。
令3年度 民間住宅ローンの実態に関する調査
(国土交通省)
団信特約含め住宅ローンを選ぶ
長期の返済が前提である住宅ローンでは、返済期間中の病気での収入減少や負担増が不安材料の1つとなります。
そういった場合の備えとして、金利水準だけでなく団信特約含めた住宅ローン選びが大切です。
特に変動金利においては金利差が小さい分、団信特約の内容や上乗せ金利などは重要な判断材料となります。
まとめ
- 住宅ローン返済が困難になる割合:3~5%
- 返済期間25年以内で完済している割合:約7割
- 住宅ローン返済が非常に負担:約5~10%
- 売却して完済する場合の状況
- オーバーローンとアンダーローン
- 団信もしくは団信特約の活用
- 早めに金融機関に相談
- 自宅の売却(任意売却含め早めに動く)
- 維持費含めた返済負担率を把握する
- オーバーローン、借り過ぎのデメリットを知る
- 変動金利の金利上昇をシミュレーションする
- 団信特約含め住宅ローンを選ぶ
ここまで住宅ローン返済に対する怖さや不安について解説してきましたが、適切な負担であれば、過度に住宅ローンを恐れる必要はないと思います。
不安が大きくてなかなかマイホーム購入に踏み切ないという方は、住宅購入後のライフプランを作成することも1つの方法です。