はじめに

家を買うと、住宅ローン返済以外にも維持するための費用が必要です。

この点、マンションの共用部の維持管理は、各自、管理費、修繕積立金を負担し、長期修繕計画などをもとに管理組合で行っていきます。

一方、一戸建ての購入を検討する場合、

・一戸建ての維持管理はなにが必要なの?
・修繕時期や費用はどう考えればいいの?
・固定資産税や火災保険料の負担は?

といった疑問も出てくるのではないでしょうか。

どのタイミングでどれくらい費用が必要かを知っておかないと、修繕費の積立の目安も分かりません。

この記事では、一戸建ての以下の維持費について、順に解説します。

  • 修繕費用
  • 固定資産税
  • 火災保険料

一戸建て購入時の資金計画、購入後の家計管理などに役立ててください。

一戸建て住宅の維持費

修繕費

購入後の修繕費用は、いつ、どれくらいかかるのでしょうか。

一戸建ての場合、延床面積や何階建てかなどによって費用は大きく変わります。

ですので、一概には難しいのですが、目安として、アットホーム株式会社が「新築一戸建てを購入し30年以上住んでいる人(398人)に実施したアンケート結果」が参考になります。

修繕費

下表は、【木造】と【鉄筋・鉄骨造】それぞれの築年数別の修繕費総額です。

【木造】

築年数修繕費総額
(平均)
30年~34年424.9万円
35年~39年376.3万円
40年~44年469.8万円
45年~49年748.2万円
50年630.0万円
全体平均470.2万円

【鉄筋・鉄骨造】

築年数修繕費総額
(平均)
30年~34年509.5万円
35年~39年549.4万円
40年~44年743.6万円
45年~49年881.3万円
50年1475.0万円
全体平均617.7万円

木造、鉄筋、鉄骨造すべての平均修繕費用は、

532.1万円(築年数平均36.8年)

となっています。

当然ですが、築年数が経過するほど、修繕箇所も増え、費用も高くなる傾向です。

また、構造別にみると、

木造住宅より鉄筋・鉄骨住宅の修繕費が、
平均140万円ほど高くなっています。

一般的に、耐久年数や税法上の減価償却期間も、木造より鉄筋、鉄骨造が長くなりますが、修繕費は木造以上にかかる結果となっています。

修繕箇所別の時期・費用

次に、修繕箇所ごとに、

・1回目の修繕時期(築年数)
・1回目の修繕費(平均)
・これまでの修繕回数

をまとめたものです。

修繕箇所1回目修繕
平均築年数
1回目平均
修繕費
修繕回数
(平均)
屋根21.1年99.0万円1.6回
外壁19.4年96.6万円1.8回
ベランダ
バルコニー
24.1年53.5万円1.3回
トイレ23.0年33.9万円1.7回
お風呂25.5年86.7万円1.6回
キッチン25.3年110.5万円1.3回
洗面台24.9年30.3万円1.3回
給湯器20.0年40.1万円1.7回
給水管25.0年28.9万円1.3回
壁紙・内壁23.4年39.5万円1.4回
26.3年45.8万円1.5回
玄関26.0年41.8万円1.3回
床下24.7年36.3万円1.7回
シロアリ関連20.5年25.5万円1.6回

新築から1回目修繕までの年数は、修繕箇所でばらつきはあるものの、概ね20年~25年で実施されています。

外からの影響を直接受ける屋根、外壁は、20年前後となっており、建物内部は水回り含め、概ね25年前後で1回目の修繕を迎えています。

また、1回目の修繕費用を見ると、
外壁、屋根、水回りではキッチン、お風呂が高くなっています。

アットホーム株式会社「一戸建て修繕の実態」調査(2021年)

不具合や故障がでるタイミングはそれぞれですが、修繕費用を抑えるには、

屋根と外壁を同時にする(足場代など節約)
・水回りをまとめてする(配管工事など節約)

などによってトータルコストは抑えやすくなります。

また、同調査で

「自分で修繕をしたことがある」と答えた人の割合は、37.2%

にのぼります。

自分で修繕をすることで費用を抑えることもできそうです。

修繕費用の積立状況

次に、これら修繕費の積立状況についても調査結果があります。

毎月積み立てているか?割合
積立てている8.3%
積立てていない91.7%

9割以上の人が修繕費用の積立をしていません。

一方、毎月積立をしている人は、
月平均2.5万円(平均14.7年)積立しています。

前出の調査結果で、平均修繕費用は、
532.1万円(築年数平均36.8年)でした。

この修繕費用を、仮に30年で積み立てるとすると、
月平均1.5万円の積立てでいける計算となります。

固定資産税とは

固定資産税は、
土地や建物など所有する固定資産に対して、市町村が課税する地方税です。

毎年1月1日時点、固定資産税台帳に記載されている所有者に支払い義務があります。

固定資産税と併せて納付するものとして、
都市計画税があります。
こちらは、市街化区域内に土地建物を所有する人に課税されます。

固定資産税評価額は3年ごとに見直されます。

固定資産税の計算方法

固定資産税額=固定資産評価額×税率

固定資産税評価額は、各市町村がその土地、建物の個別要因踏まえ決定します。

固定資産税評価額の目安として、

土地について
実勢価格(実際の取引価格)の70%

建物について
新築時の請負金額の50~60%

固定資産税の税率は、市町村によって違う場合もありますが、
原則、税率1.4%
(都市計画税は最大0.3%)
となっています。

土地・建物の固定資産税

固定資産税は、土地、建物それぞれ計算します。

この点、
土地は、建物と異なり経年劣化がありません。

ですので、

築年数が経過しても、地価が上がると固定資産税額が上がる場合もあります。

評価額が上がることは、資産価値が上がっていることでもあります。

一方、建物の固定資産税額は、建物の床面積や構造によって異なります。

そして、中古の建物については、
築年数に応じた減価率を加味した上で判断されます。

この点、
木造より耐久性の高い鉄骨造や鉄筋コンクリート造は、

もともと固定資産税も高く、
木造と比べ築年が経過しても下がりにくい

といえます。

固定資産税の確認方法

中古戸建ての固定資産税額は、
市町村から所有者(売主)に送付される、
固定資産税の納税通知書に記載されています。

購入前に不動産会社通じて確認してください。

神戸市 固定資産税
固定資産税納税通知書(神戸市サンプル)

住宅用地の軽減措置

住宅用地を購入した場合に、
課税標準額を軽減する特例があります。

固定資産税都市計画税
200㎡以下の部分
(小規模住宅用地)
課税標準×1/6課税標準×1/3
200㎡を超える部分
(一般住宅用地)
課税標準×1/3課税標準×2/3

この特例については、期限が設けられていません。

新築住宅の固定資産税の軽減措置

新築住宅の場合、
建物について固定資産税の軽減措置があります。

但し、軽減されるのは1戸当たり120㎡までです。
都市計画税については、軽減措置はありません。

一般の新築住宅の場合
軽減される期間軽減される割合
3年間
(5年間)

1/2
( )内は、3階建ての耐火・準耐火建築物の場合
長期優良住宅の新築住宅の場合
軽減される期間軽減される割合
5年間
(7年間)

1/2
( )内は、3階建ての耐火・準耐火建築物の場合

新築住宅に適用される減税措置は、
令和6年3月31日までに新築された住宅に適用されます。

固定資産税の目安・平均

固定資産税は、地域や構造など個別要因で変わりますが、一例として、固定資産税の算出方法を紹介します。

新築の一戸建てを購入した場合

土地:2,400万円(110㎡)
建物:2,000万円(新築)
 ※土地建物の固定資産税評価額は、
  土地は実勢価格の70%、
  建物は請負金額の60%とする

【土地の固定資産税評価額】
 2,400万円×0.7=1,680万円
【土地の固定資産税額】
 1,680万円×1/6(住宅用地の軽減)×1.4%(税率)
 =39,200円

【建物の固定資産税評価額】
 2,000万円×0.6=1,200万円
【建物の固定資産税額】
 1,200万円×1/2(新築住宅の軽減)×1.4%
 =84,000円

 固定資産税額(年額)
 39,200+84,000=123,200円

火災保険料

住宅 維持費

次に、火災保険料について、マンションの場合、共用部分は管理組合が火災保険をかけます。

ですので、一戸建ての火災保険料は、共用部に囲まれたマンションの火災保険料よりも高くなります。

一戸建ての火災保険料

火災保険料に影響するものは以下の通りです。

  • 場所(地域、立地)
  • 床面積
  • 築年数
  • 構造耐火性能(M構造・H構造・T構造)
  • 保険の対象(建物・家財)
  • 補償内容
  • 保険金額(補償額)
  • 免責金額(自己負担)
  • 契約期間(一括か年払い)
  • 耐震性(地震保険) など

購入する家が決まり、火災保険を決めるとき、

どの災害や事故に対して(補償内容)、
どれくらい備えるか(保険金額・免責金額)

で変わります。

一戸建て火災保険料の相場は?

一戸建ての火災保険料の目安を知る意味で、比較サイトの1つ「i保険]でシミュレーションしました。

見積り条件は以下の通りです。

【場所】兵庫県
【建物構造】H構造(非耐火構造)
【築年数】10年
【建物保険金額】2,000万円
【家財保険金額】500万円
【補償内容】
 ・火災・落雷・爆発(基本)
 ・風災・ひょう災・雪災
 ・水災


※2021年7月見積り

この場合の保険料(火災保険10年・地震保険5年)は、以下の通りです。

保険会社保険料
(火災10年、地震5年)
東京海上日動509,320円
日新火災525,730円
SBI損保437,860円
損保ジャパン406,820円
2021年7月時点

保険会社によって保険料に違いがありますし、これら以外の保険会社も数多くあります。

ですので、不動産会社、住宅会社から紹介される提携保険会社だけで決めるのではなく、しっかりと比較することも大切です。

ちなみに、比較サイトにないソニー損保でシミュレーションしたところ、保険料はもっとも安く402,093円でした。

ただ、保険料も大切ですが、
火災保険は、火災、自然災害リスクに対する備えです。

もっとも大事なことは、

必要な補償内容と保険金額を、
立地条件や家族構成にあわせて最適化する

ことです。

前述の屋根や外壁などの補修費用についても、台風や大雨、落雷など自然災害によってもたらされたものは、補償を最適化し、保険金申請を確実にすれば抑えることができるコストもあります。

まとめ

一戸建て住宅購入後にかかる維持費

  • 補修費用
  • 固定資産税
  • 火災保険料

それぞれの費用について、時期や費用の目安について解説してきました。

あくまで一例ですが、
これまでの事例で一戸建ての維持費(概算)をまとめると、

修繕費15,000円/月
固定資産税10,000円/月
火災保険料3,800円/月
合計28,800円/月

火災保険料は、450,000円(火災保険・地震保険10年)として試算

長い目でみれば、住宅ローン返済以外の維持費はこれくらいかかるイメージです。