住宅ローン団体信用生命保険

住宅ローンを契約する際、通常団体信用生命保険(以下「団信」)への加入が条件となります。

フラット35のように団信が任意加入の住宅ローンもありますが、基本的には、皆さん団信に入られます。

団信とは、
住宅ローン返済期間中に、契約者が死亡もしくは高度障害になった場合に保険金が下り、住宅ローン残債務に当てるための保険です。

契約者が亡くなったあと、残された家族に住宅ローンの返済が残らないようにするためです。

通常、民間の住宅ローン商品では、死亡・高度障害といった団信の保険料は金利に含まれます。

つまり、フラット35など一部団信加入が任意の住宅ローン商品以外は、住宅ローンを利用には、団信加入が必須となります。

そして、今は各金融機関が、死亡、高度障害だけでなく、それ以外の疾病をカバーする特約付の団信を出しています。

今の低金利の状況で、金利差の違いが少ないなか、こういった特約付の団信で差別化を図ろうとしているとも言えます。

団体信用生命保険の特約は必要!?

団信の特約は、金融機関によって商品内容も保険料、保険金の支払条件も異なります。

  • がん団信
  • 3大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)
  • 7大疾病あるいは8大疾病

これら以外にもさまざまな商品があります。

では、こういった特約は必要なのでしょうか?

特約を付けるかでどうかで悩むのは、

保険料(コスト)の負担に対して、
本当に必要性(メリット)があるか?

というところだと思います。

そこで、三井住友銀行さんの8大疾病保障付団信を例に考えてみました。
(2018年7月時点)

団信特約保険料は実際いくらか?

三井住友銀行の場合、8大疾病の特約をつけると、住宅ローン金利が+0.3%上がります。

8大疾病とは、
ガン、急性心筋梗塞、脳卒中のいわゆる3大疾病に、高血圧症、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵炎を加えたものです。

0.3%上がるといってもよく分かりませんので、支払う保険料はいくらになるのか、
借入金額3,000万円と4,000万円の場合で
毎月の返済額総返済額を試算してみました。   

団信特約有無による毎月返済額の差

・団信特約なしの場合:金利1.0%
・団信特約ありの場合:金利1.3%
  試算条件:返済期間30年(元利均等返済)

借入金額3,000万円4,000万円
8大疾病特約
なし
96,491128,655
8大疾病特約
あり
100,681134,241
団信特約
有無の差
4,1905,586

団信特約有無による総返済額の差

・団信特約なしの場合:金利1.0%
・団信特約ありの場合:金利1.3%
  試算条件:返済期間30年(元利均等返済)

借入金額3,000万円4,000万円
団信特約
なし
3,473万円4,631万円
団信特約
あり
3,624万円4,832万円
団信特約
有無の差
151万円201万円

借入金額が3,000万円の場合

8大疾病特約の有無による毎月返済額と総返済額の違いは、

毎月の差:4,190円
・総返済額の差:約150万円

となります。

借入金額が4,000万円の場合

・毎月の差:5,500円
・総返済額の差:約200万円

3,000万円から4,000万円に借入(保険)金額が上がる分、返済額の差も大きくなります。

つまり借入金額によっても支払う保険料は違ってきます。

ですので、借入金額に応じて、こういった保険料(コスト)を負担しても保障が必要か判断しなければなりません。

団信特約の検討するときのポイント

住宅ローン団信特約

団信の特約保険料を負担しても、特約をつけるべきか否かを判断するポイントとして、2点あります。

  • 保険金額の推移
  • 保険金の給付条件

です。順番にみていきます。

団信特約保険料と保険金額の推移

団信は、一時金などもありますが、

住宅ローン残高が保険金額

となります。

ですので、返済が進んでいくと、
住宅ローン残高が減ると保険金額も減る、
ということです。

借入金額10年後残高
(保険金額)
20年後残高
(保険金額)
3,000万円2,126万円1,132万円
4,000万円2,835万円1,509万円

つまり、団信特約保険料はかかり続ける一方、保険金額は減っていきます。

保険料として上乗せされた金利負担は住宅ローン完済まで続きます。

但し住宅ローン商品のなかには、一部
途中で特約部分を解約できる商品もあります

生命保険の活用

そして、もう1つの考え方として、

住宅ローン特約の代わりに、生命保険の就業不能保険等を利用することも考えられます。この場合、

  • 保険金額の減少にあわせ保険料が調整できる
  • 住宅ローン残高の減り具合によっては、途中解約できる

団信8大疾病特約の給付条件

2つめのポイントが、保険金がどういった場合に支払われるかという給付条件です。

先ほどの三井住友銀行の8大疾病ですと、保障内容の概要は以下のようになっています。

住宅ローン8大疾病付団信
三井住友銀行のHPから引用(2018年7月)

ガンの場合

上皮内ガンは除きますが、
ガンと診断されれば保険金が下ります

急性心筋梗塞、脳卒中の場合

60日以上「所定の状態」が継続した場合、保険金が下ります。

ここでいう「所定の状態」とは、

急性心筋梗塞の場合
軽い家事や事務等の座業はできるが、それ以上の活動では制限が必要となる状態をいいます。

・脳卒中の場合
言語障害、運動失調、麻痺等の他覚的な神経学的後遺障害がある状態を指します。

3大疾病以外の5つの疾病の場合

就業不能状態が1か月を超えた場合、最長12回のローン返済が保障されます。

さらに、
就業不能状態が13ヵ月を超えて継続した場合、
その時点の住宅ローン残高に相当する保険金がおります。

こうやってみると、ガン、心筋梗塞、脳卒中はまだしも、その他の5つの疾病については、

就業不能状態が13か月を超える発生率はどれくらいか

と考えてしまいます。

つまり、
保険金の給付条件としてハードルが高すぎる
ように思います。

年齢で団信特約の保障内容が変わる

また、保障内容は借入時の年齢によって変わります

三井住友銀行の場合、借入時の年齢が46歳以上の場合、以下の通りです。

住宅ローンの8大疾病付団信
三井住友銀行のHPから引用(2018年7月)

8大疾病すべて、就業不能状態が12か月以上継続することが条件となります。
給付条件としては、かなり厳しくなります。

まとめ

団信特約も保険ですので、一般の医療保険や死亡保障などと同様、どんな保障をどこまでかけるかは、家族構成やその人考え方で変わります。

もちろん保険をかけるに越したことはないのですが、経済的負担は当然増えます。

ですので、住宅ローン団信の特約をつけるかを判断する上で、

・保険料の負担はどれくらいか?
・保険金の給付基準にあてはまる可能性は?
・生命保険等で代替できないか?

ということは考えたほうがよいです。

また、本来、医療保険や死亡保障などの保険も、人生の節目節目で見直すべきです。

ただ、団信特約で途中解約ができない場合、住宅ローン返済期間中は見直しができない
ということでもあります。

そういった点も踏まえ、のちのち後悔のないように選んでください。