投稿日:2023年1月27日 | 最終更新日:2024年11月21日

昨年2022年12月、日銀は金融政策決定会合で、これまでの長期金利の上限を0.25%におさえていたものを0.5%に引き上げました。

これは事実上の利上げといえます。

ただ、今後も利上げの流れが続くかというとそうではなく、今年に入り、2023年1月の日銀金融政策決定会合では、緩和政策を継続する方針が出されました。

こういった金融政策の変更にあたって、住宅ローン金利への影響について、さまざまな予測があります。

この記事では、これから住宅ローンを利用する方に、金利動向と住宅ローン選びについて解説します。

この記事でお伝えすること

●金利動向を予測する意味
●金利上昇踏まえた住宅ローン選び

金融政策変更の影響

  1. 住宅ローン(固定金利)契約中
    影響なし
  2. 住宅ローン(固定金利)検討中
    影響あり
  3. 住宅ローン(変動金利)契約中
    現時点影響なし、今後影響あり?
  4. 住宅ローン(変動金利)検討中
    現時点影響なし、今後影響あり?

今回の利上げは長期金利であり、長期金利の代表的な指標は10年物国債の利回りです。

長期金利が影響する住宅ローンは、全期間固定金利や固定期間選択型(10年以上)などです。

一方、変動金利は、短期プライムレートといって長期金利とは異なる指標の影響を受けます。

今回の利上げによって、フラット35など全期間固定金利、固定期間選択型の商品の金利が上がったことは事実です。(2)

既に固定金利で契約中の方は、契約時の金利で固定されているので影響はありません(1)

一方、変動金利の金利は昨年から殆ど変わっていません(3・4)

ただ、金融機関の担当者に聞くと、
現在すでに変動金利で借入している方の、固定金利への切り替えの相談、問合せは増えているようです。

住宅ローン金利がどうなるか?

現在、新たに住宅ローンを契約する約7割の方は変動金利タイプを選んでいます。

ですので、多くの方は今回の事実上の利上げを見て、

と考えられる方も少なくないと思います。

住宅ローン金利を予測する意味

こういった状況で、将来の住宅ローン金利動向を予測する記事や動画は数多くあります。

そういった情報の中には、住宅ローン金利に影響するもの、金利の決まり方など参考になる情報は多いです。

特に、変動金利を選ぶ場合、借入後も金利動向と付き合っていくことになりますので必要な知識も多々あるかと思います。

ただ、一方で、いろいろな情報があるなか共通することがあります。

将来の金利動向は誰にも分からない

もちろん、住宅会社や不動産会社にも分かりません…

不確定要素が多い

前述の通り、住宅ローン金利は、変動金利は短期プライムレート、固定金利であれば10年物国債といった指標の影響を受け、各金融機関が金利を決める判断材料としています。

加えて、これらの指標も、日本だけでなく世界の景気、各国の金融政策の影響を受けます。

また、国内では金融機関の競争や営業方針によって金利動向は変わります。

つまり、住宅ローンの金利動向を予測するにしても、不確定要素が多すぎてあまり現実的ではないと言えます。

返済期間が長期にわたる

さらには、住宅ローンは20年、30年の返済を前提としています。

当然ですが、将来の予測する際、それが長期であればあるほど予測は難しくなります。

こういった意味で、

住宅ローンを決める上で、
今後の利動向を予測することは、
あまり意味がない

と考えます。

では、どのように考えるべきでなのでしょうか?

①変動・固定の金利差を保険と考えられるか?
②金利上昇時のリスクの大きさ

で考えるべきだと思います。

変動・固定の金利差から考える住宅ローン選び

住宅ローン金利タイプの選択肢は大きく3つです。

  • 変動金利型
  • 固定金利型
  • 固定期間期間選択型

それぞれの金利タイプの説明は省略しますが、このなかで固定期間選択型の住宅ローンを選ばれる方は、固定期間に応じて選択する理由があるはずです。

  • 固定期間が終了する○年後に繰上げ返済資金がある
  • 借入金額が少ない
    (≒固定期間終了後の金利上昇の影響が少ない)

間違っても、「とりあえず最初の何年間か金利を固定したい」「変動か固定か決められない」といった理由で選んではいけません。

固定期間選択型の商品で迷われる方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

ですので、ここでは多くの方が悩まれるであろう、「変動金利か、固定金利か」について考えます。

変動金利0.475%と固定金利1.395%

金融機関によって金利の違いはありますが、変動金利でいうと、ネット銀行では、0.3%台の低金利の商品もあります。

一方、固定金利では、地方銀行含めた市中銀行で固定金利に力を入れている金融機関では1.1%からフラット35の1.68%(融資率9割以下)までさまざまです。(2023年1月時点)

ここでは、変動金利と固定金利を判断する事例として、ネット銀行やフラット35それぞれの審査基準なども考慮し、以下の市中銀行の金利で考えます。

・変動金利:0.475%(三菱UFJ銀行など)
・全期間固定金利:1.395%(りそな銀行)

 ※2023年1月
 ※最終的な適用金利は審査内容、事務手数料か保証料かなどで変わる場合があります

変動と固定の金利差の意味

この事例でいうと、変動金利0.475%と固定金利1.395%の金利差は、「0.92%」です。

この金利の差は何か?

この差は、住宅ローンを貸し出す金融機関、借入をする利用者からすると、

金利の上昇リスクに対する保険

つまり、

  • 金利上昇のリスクを金融機関が負う固定金利は高く設定
  • 金利上昇のリスクを契約者が負う変動金利は低く設定

されているわけです。

また、日本の経済状況を踏まえた「日本の金利上昇リスクの大きさ」を表しているとも言えます。

金利上昇リスクに対する保険料

ですので、あなたがこの金利差を金利上昇リスクの保険料として考えられるか否かで、住宅ローン選びは変わります。

その保険料は借入金額によって変わります

下表は、借入金額2,000万円と4,000万円の場合の毎月返済額の差をあらわしたものです。

2,000万円4,000万円
変動
(0.475%)
51,696103,392
全期間固定
(1.375%)
60,213120,426
返済額の差8,517円17,034円
※元利均等・返済期間35年・ボーナス返済なし

つまり、借入金額によっても返済額の差、すなわち必要な保険料も変わります。

借入金額2,000万円の場合】
毎月の保険料は、8,517円

【借入金額4,000万円の場合】

毎月の保険料は、17,034円

この返済額の差を保険と割り切れるのであれば、固定金利を選びやすくなります。

金利上昇リスクの大きさ

また、変動金利を選んだ場合、1%、2%それ以上の金利上昇も可能性としては考えられます。

こういったリスクについてどこまで考えるか?

仮に、3%、4%、それ以上金利が上昇したら…ということまで備えたいということであれば、そもそも固定金利でいいのではとなります。

ですので、ここでは2%までの金利上昇リスクについて考えます。

返済額と返済負担率からみる金利上昇リスク

金利が上昇した場合のリスクの大きさは、借入金額によって変わります。

以下、住宅ローン契約者の年収600万円として、
2,000万円、4,000万円の借入した場合の毎月の返済額と返済負担率からシミュレーションします。

返済負担率とは、
年収に対する年間の住宅ローン返済が占める割合

借入金額2,000万円の場合

変動金利で5年後に金利上昇した場合

当初返済額1%上昇1.5%上昇2%上昇
毎月返済額51,69659,64363,88368,297
返済負担率10.3%11.9%12.7%13.6%
●全期間固定金利の場合
完済まで
毎月返済額60,213
返済負担率12.0%

借入金額4,000万円の場合

●変動金利で5年後に金利上昇した場合
当初返済額1%上昇1.5%上昇2%上昇
毎月返済額103,392119,288127,767136,595
返済負担率20.6%23.8%25.5%27.3%
●全期間固定金利
完済まで
毎月返済額120,426
返済負担率24.1%

【試算条件】
※元利均等・返済期間35年・ボーナス返済なし
※年収の変動は考慮していません
※実際の返済額は、変動金利の5年ルールや125%ルールによって、据え置き、制限されますが、この表では考慮しておりません

(金利上昇分の返済額が増えることは違いがありません)

この事例でいうと、

借入金額が2,000万円の場合、
金利上昇しても、返済負担率的にはまだ返済を続けていきやすい。
(返済負担率10.3%から13.6%)

一方、
借入金額が4,000万円の場合、
金利上昇によって、返済負担率的にもローン返済が厳しくなる可能性が出てきます。
(返済負担率20.6%から27.3%)

1人1人収入や借入金額以外の家計支出などで負担感は異なります。

ですので、
家計の状況に応じて、毎月の返済額や返済負担率が上がった場合の影響必要があります。

まとめ

住宅ローン選びは、金利動向が予測できないことから悩まれたり不安を感じられたりすると思います。

ただ、大切なことは、住宅ローンのリスクは、金利上昇だけではなく、長期間返済をすることも含め考える必要があり、1人1人違うということです。

長い付き合いとなる住宅ローン返済について、

・金利上昇リスクに対する保険料はいくらか?
保険として考えられるか?
・金利上昇した場合の家計や返済負担はどうか?

などの状況踏まえ、住宅ローン選びをすることが必要です。