投稿日:2015年11月14日 | 最終更新日:2023年10月18日

はじめに

同じマンション内で専有面積が違う複数の物件が売りに出されていることがあります。

専有面積
 区分所有者(マンション購入者)に所有権、専用の使用権が認められている部分の面積。
 (バルコニーや玄関ポーチは含まれません)

広いに越したことはないが、ローンや維持費の負担はどうなの?

このように思われたことはないでしょうか。

マンション価格は、専有面積だけで決まるわけではありませんが、相場(㎡当たりの単価)が同じ場合、広さの違いでこれくらいの価格差が出ておかしくはありません。

  • 3,500万円(専有面積70㎡)
  • 4,250万円(専有面積85㎡)

確かに広さは魅力ですが、750万円の価格差は大きいですよね。

ただ、購入価格としては750万円の違いですが、維持費を含めた住宅コストとして考えた場合、その差はもっと大きくなります。

この記事では、専有面積の違いによって「住宅購入時の諸費用」「住宅購入後の維持費」含めたトータルコストの違いを比較しました。

これからマイホームを購入される方の物件選びや予算の決め方の参考にして頂ければと思います。

専有面積70㎡と85㎡を比較

【事例】
マンション①
3,500万円(専有面積70㎡)

マンション②

4,250万円(専有面積85㎡)
 ※他条件は同じ前提とします。

この2つのマンションを住宅ローンを利用して購入するとして、完済までのトータルコストがどれくらい変わるかを比較してみます。

購入時の諸費用の比較

中古マンション購入時の諸費用として、主なものは以下の通りです。

  • 印紙代
  • 登記費用
  • 仲介手数料
  • 住宅ローン諸費用
  • 火災保険料(一括)

ここでは、登記費用と火災保険料の違いはそれほど大きくないことから、仲介手数料と住宅ローン諸費用について比較します。

仲介手数料

仲介手数料は正規の手数料率(売買価格×3%+6万円)として算出しました。

売買価格仲介手数料(税込)
3,500万円1,221,000円
4,250万円1,468,500円
※正規仲介手数料率3%+6万円(税別)で計算

住宅ローン諸費用

購入価格によって住宅ローン借入金額も変わり、住宅ローン事務手数料や保証料が変わります。
ここでは、諸費用は自己資金で支払う前提で、借入金額を3,500万円と4,250万円として試算します。

住宅ローンは保証料一括払い、保証料金利上乗せ、事務手数料型といくつかありますが、ここでは事務手数料型(借入金額×2.2%)で比較します。

借入金額融資事務手数料
3,500万円770,000円
4,250万円935,000円
※融資事務手数料は2.2%(別込)で計算

中古マンションの維持費の違い

中古マンションの修繕積立金
大規模修繕工事

次に、購入後の維持費の違いを比較します。

主な維持費は次のとおりです。

  • 管理費
  • 修繕積立金
  • 固定資産税
  • 住宅ローン返済

管理費

ほとんどのマンションでは、管理費、修繕積立金は、専有面積に応じて負担金額が決まります。
そのため、専有面積は、毎月の管理費、修繕積立金に影響します。

平成30年度マンション総合調査によると、一戸当たりの管理費収入の平均は次のようになっています。

・単棟型:221円/㎡・月
・団地型:216円n/㎡・月


ここでは、比較上200円/㎡・月として試算します。

専有面積管理費/月
70㎡14,000円
85㎡17,000円

平成30年度マンション総合調査(国土交通省)

修繕積立金

次に、修繕積立金について、平成30年度マンション総合調査を見ると、一戸当たり164円/㎡・月となっています。
※使用料・専用使用料からの充当額を除いた場合

また、国土交通省のガイドラインでは、202円/㎡・月が修繕積立金としての目安となっています。

修繕積立金の積立方式について、平成27年以降完成マンションの69.7%が「均等積立方式」ではなく、「段階増額積立方式」を採用しています。(同マンション総合調査)

そのため築年経過に従って、多くのマンションでは修繕積立金の増額を見込んでおく必要があります。

比較上では、修繕積立金は以下の設定で比較します。

購入から15年間:180円/㎡・月
16年目以降:250円/㎡・月
    で試算します。

専有面積修繕積立金/月
70㎡13,500円
85㎡15,300円
1年目~15年間
専有面積修繕積立金/月
70㎡17,500円
85㎡21,250円
16年目~

マンションの修繕積立金に関するガイドライン(国土交通省)

固定資産税・都市計画税

次に、固定資産税についてです。

専有部分が広い分、建物だけでなく共有する土地の持分も増えますので、固定資産税も高くなります。

ここでは、固定資産税・都市計画税(年間)を2,000円/㎡とし以下の金額で比較します。

※固定資産税は3年おきの見直しがありますがここでは考慮していません。

専有面積固定資産税/年
70㎡140,000円
85㎡170,000円
30年間の平均値として試算

住宅ローン総返済額

次に、住宅ローン総返済額について、次の条件で総返済額を算出しました。

【試算条件】
・金利:1.1%(全期間固定)
・返済期間:30年

・返済方法:元利均等返済

専有面積借入金額総返済額
(概算)
70㎡3,500万円4,110万円
85㎡4,250万円4,990万円

住宅ローン完済までのトータルコスト

ここまでの、購入時の諸費用、購入後の維持費を比較しました。
それを、住宅ローン完済までの30年間のトータルコストで比較としてまとめたものが下表です。

70㎡
(3,500万円)
85㎡
(4,250万円)
仲介手数料1,221,0001,468,500
住宅ローン
手数料
770,000935,000
管理費5,040,0006,120,000
修繕積立金①
(15年目まで)
2,430,0002,754,000
修繕積立金②
(16年目以降)
3,150,0003,825,000
固定資産税4,200,0005,100,000
住宅ローン
総返済額
41,100,00049,900,000
合計57,911,00070,102,500
※管理費、固定資産税の変動は考慮していません
購入からローン完済までのトータルコスト

【専有面積70㎡のマンション】
 約5,790万円

【専有面積85㎡のマンション】
 約7,010万円

購入から住宅ローン完済までのトータルコストの差は約1,220万円になります。

購入価格では750万円の差ですが、30年間の住宅コストで見ると、これだけの差になり得ることが分かって頂けたのではないでしょうか。

こういった費用の差は、将来の貯蓄や老後資金にも影響します。

まとめ

中古マンションを検討するときは、管理費や修繕積立金などの維持費の負担を長期の視点で判断することで失敗が少なくなります。

ただ、なかなかこういった費用を長期の視点でイメージすることは簡単ではありません。

そのための1つの方法として、購入後のライフプランを作成する方法もあります。

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