投稿日:2022年3月10日 | 最終更新日:2023年10月12日
一戸建てとマンション違い
戸建てかマンションか?迷われる方もいらっしゃると思います。
戸建てとマンションの大きな違いは、次の2点です。
●土地・建物の所有形態が単独か共有か
●維持管理を自分でするか管理組合で行うか
マンションには共用部分と専有部分があり、共用部分の維持管理や費用負担は管理組合として行っていきます。
一方、戸建ての場合、外壁や屋根、もっというと土地そのものまで維持管理を自身で行います。
こういった根本的な違いから、戸建てとマンションを比べた場合、それぞれメリット・デメリットがあります。
この記事では、戸建てかマンションかを考えるうえで、次の4つの視点で比較しながら解説します。
- 住み心地
- 維持管理の負担
- 災害リスク
- 資産性
戸建てとマンションの住み心地を比較
戸建てとマンションの「住み心地」について以下の項目について比較しました。
- 音の問題
- 防犯性
- 断熱性・気密性
- 建物利用の自由度
- 高齢になった場合の住みやすさ
音の問題
音の問題について、マンションと戸建てを比較してみます。
マンションの音の問題
マンションの場合、隣接住戸とは壁で、上下階の住戸とも床、天井で接しています。
ですので、一戸建てと比べると音の問題は生じやすいといえます。
マンション総合調査(国土交通省)によると、居住者間の行為やマナーによるトラブルの内訳のなかで、音の問題が全体の38.0%ともっとも多くなっています。
国土交通省「平成30年マンション総合調査」
音の問題を防ぐために、二重床が採用されていたり、一定の遮音性能を満たす床材の使用が管理規約や使用細則で義務付けられていますが、隣接もしくは上下階の住人に左右されるのは仕方がありません。
同一建物内での共同生活になりますので、音の問題のリスクはあります。
戸建ての音の問題
戸建ての場合、テラスハウスなどを除き隣接住戸と直接接していない分、マンションと比べると音の問題は生じにくいといえます。
とはいえ、都市部の住宅密集地などでは、狭い敷地だと境界線から建物までの距離がない場合もあります。
ペットの鳴き声や音楽、夏場などはテレビの音量の問題が生じることもあります。
また、戸建てはマンション以上に周辺環境の影響を直接受けます。用途地域によっては、商業施設やオフィス、店舗などが近隣に建つことで、外部からの音や騒音の問題が生じやすい点には注意が必要です。
ちなみに、プライバシー面について、隣地境界から1m以内に窓やベランダがあり、隣の家を見通すことができる場合は、目隠しを設置することが義務づけられています(民法235条)
防犯性・セキュリティ
防犯性やセキュリティー面について戸建てとマンションを比較してみます。
マンションの防犯性
マンションの場合、物件にもよりますが、前面道路や敷地境界から建物、エントランスまで一定の距離があります。
また、ほとんどのマンションでは、エントランスや駐車場などに防犯カメラが設置されるとともに管理事務所、他の住民の目もあります。
マンション総合調査によると、防犯カメラや遠隔の監視システムを導入しているなど防犯対策を実施している管理組合は約8割にのぼります。
立地条件や所在階によっても、外部からの侵入の容易さや防犯性は個々に違いはありますが、戸建てと比べると防犯性は高いといえます。
戸建ての防犯性
戸建ての場合、マンションと比べると前面道路や隣の敷地からの侵入は容易です。
ですので、一般論として防犯性・セキュリティ面ではマンションより劣ると考えられます。ホームセキュリティや防犯カメラの設置、ドアの鍵を開けにくくする、時間がかかるものにするなどの対応は可能ですが、100%侵入を防ぐのは困難で、またそれだけのコストもかかります。
警察庁の統計調査でも「侵入窃盗」の発生割合は、マンションより一戸建て住宅が多くなっています。
断熱性・気密性
断熱性・気密性については、2000年施行の「住宅性能表示制度」や2009年(中古住宅は2016年)から始まった長期優良住宅認定制度によって、断熱性能などを客観的に評価することができるようになりました。
ここでは一般的な木造の戸建てとマンションの断熱性・気密性について比較します。
マンションの断熱性・気密性
マンションは鉄筋コンクリート造という構造的にも、戸建てと比べると開口部が少ないこと点からも、一般的に断熱性も気密性も戸建てより高くなります。
特に、角部屋ではない中住戸は、上下左右を部屋に囲まれ、より高い断熱性、気密性を保つことができます。
戸建ての断熱性・気密性
戸建ての外壁は四方が外気に面し、また、マンションと比べても開口部の面積も広い分、外気温の影響を受けやすく、マンションと比べると、断熱性や気密性は低くなります。
断熱性や気密性が低いと夏は暑く、冬は寒いだけでなく、光熱費が高くなりやすいです。また、結露によるカビの発生やヒートショックなど、健康面にも影響を与える場合があります。
ただ、戸建てでも高気密、高断熱の住宅性能を備えているものもありますし、これから建てる場合は、住宅性能にこだわった家を建てることができます。
また、中古住宅を購入した場合も断熱リフォームするなど、マンションではできませんが、戸建ての場合、住宅性能にこだわった対策を自ら行うことができます。
建物利用の自由度
建物を利用するうえでも、マンションと戸建ては違います。
マンションの建物利用の自由度
マンションの場合、管理規約によって住居以外の利用方法は制限されています。民泊なども禁止している管理組合が多いです。
また、共用部分であるバルコニーの利用方法や飼育できるペットの大きさや数など、管理規約や使用細則によって定められています。
専有部分をリフォームする場合でも、管理規約などで制限される場合があります。
戸建ての建物利用の自由度
戸建ての場合、店舗や事務所として活用できますし、民泊、ペットの飼育まで自由に利用することができます。
また、リフォームやリノベーションだけでなく、増築や建て替えまで自由に行うことができます。
建物利用の自由度は、戸建ての方が高いといえます。
高齢になった際の住みやすさ
最後に、高齢になった場合の住みやすさについて比較してみます。
マンションの高齢になった際の住みやすさ
マンションは基本的にワンフロアで段差が少ない分、高齢になっても生活しやすい環境といえます。
また、一般的に、マンションは駅近に建てられることが多い分、車がなくても電車、バスなどの交通利便性は一戸建てより高いといえます。
戸建ての高齢になった際の住みやすさ
一戸建ての場合、地域にもよりますが2階建てあるいは3階建てが主流です。地価が高い都市部では、狭小敷地に3階建て戸建て住宅も少なくありません。
購入当初は苦にならない生活動線や間取り、建物や庭の掃除やメンテナンスも、高齢になると負担になる場合があります。
また、前述のように防犯性という意味では、一般的にマンションが高くなりますので、そういった意味でも高齢になった際の住みやすさはマンションの方が高いといえます。
戸建てとマンションの維持管理の違い
修繕・メンテナンス
修繕やメンテナンスの面について、戸建てとマンションを比較しました。
戸建ての修繕・メンテナンス
戸建ての場合、屋根や外壁などの修繕計画について、いつ、どの範囲を、いくらの予算で行うかを自分で決めることができます。
また、台風や集中豪雨、地震などの自然災害の影響は、マンション以上に戸建てが受けやすいですので、被災した場合も、火災保険などを活用しながら自ら補修しなければなりません。する必要があります。
つまり、戸建ての場合、自身で屋根や外壁の状態を確認しながら、適切な修繕時期を判断し、そのための費用を準備する責任がある一方、修繕やメンテナンスをする箇所や費用などに自由度があります。
マンションの修繕・メンテンナス
マンションの場合、長期修繕計画にもとづき、管理組合で話し合いながら共用部分の補修、メンテナンスを行い、そのための費用を修繕積立金として管理組合で徴収しています。
また、自然災害に対しては、マンションの共用部分は管理組合として火災保険や地震保険に加入しますので、被災した際も管理組合として対応していくことになります。
こういった意味では、維持管理を管理組合として計画的にやっていける安心感はある一方、自分自身で修繕積立金や修繕時期を決めることはできません。
維持管理コスト
維持管理のコスト面について比較しました。
戸建ての維持管理コスト
- 固定資産税
- 火災保険料
- 修繕・メンテナンス費用
戸建ての場合、マンションのような共用部分はなく、全てを自分で管理をする必要がある一方、管理費の負担はありません。
また、マンションと異なり、敷地内に駐車スペースを確保できれば駐車場代はかかりません。
ただし、火災保険料は、構造的にも補償範囲としてもマンションと比べて高くなります。
修繕・メンテナンス費用は、立地条件にもよって変わりますが、20年近くなるとどこか修繕箇所が出てきて必要となります。
目安としては、30年~35年でおよそ500万円の修繕費用がかかる調査結果があります。
詳しくは、こちらの記事も参考にしてください。
マンションの維持管理コスト
- 管理費・修繕積立金
- 固定資産税
- 火災保険料
- 修繕・メンテナンス費用
- 駐車場代
殆どのマンション管理組合は、管理費を徴収し、共用部分の清掃や施設の管理を管理会社に委託しています。
修繕積立金は、マンションによって違いもありますが、大規模修繕工事(概ね13~15年に1回程度)が行われるタイミングなどで高くなる傾向にあります。
車を保有する場合、駐車場代がかかりますので、長期のスパンで考えた場合、維持管理コストはマンションが一戸建て上回るケースが多いです。
災害リスク
最近では、台風、集中豪雨など自然災害の発生頻度も増え、規模も大きくなっている傾向があります。
災害リスクの点からマンションと戸建てを比較した場合、マンションは、居住する専有部分は、バルコニーや共用廊下といった共用部分に囲まれていますので、戸建てと比べると、台風や集中豪雨などの被害が専有部分に及ぶ可能性は小さくなります。
大雨や川の氾濫があった場合の浸水リスクや被害の大きさは、戸建てはマンション以上に大きくなります。
マンションの場合、立地にも左右されますが、一般的には3階以上であれば水災の補償をつける必要はないでしょう。
そのため、一戸建てはマンション以上にハザードマップや地盤、地歴の確認が重要です。
また、地震の影響についても、マンション以上に戸建ては影響を受けやすいといえます。
建築基準法や耐震性の見直し、耐震等級制度など、戸建てにおいても地震に対して強い住宅は増えてきていますが、倒壊はしなくても屋内の被害を含め、基礎や屋根、外壁への損傷などの被害には自分自身で対応する必要があります。
戸建てとマンション資産性が高いのはどっち?
戸建て(木造)とマンションの資産価値を比較した場合どのようになるのでしょうか。下図は、木造戸建てとマンションの耐用年数からみた資産価値の減少、築年数と査定価格の推移を表したものです。
国土交通省「中古住宅流通 リフォーム市場の現状」
戸建ての資産性
税法上の耐用年数は、木造は22年、マンションは47年となっていますが、実際の耐用年数とは必ずしも一致しません。また、耐用年数と資産価値つまり市場で取引される価格も必ずしも一致しません。
このグラフでは、木造住宅の建物の価値がおよそ20年~25年で新築時の10%程度に下がっていますが、建物の耐久性能やメンテナンスの仕方によって、それ以上の価値を維持する建物は数多くあります。
一方、土地は減価償却しない資産ですので、再開発や新駅開業などで地価が上昇すれば、築年に関係なく資産価値も上昇しますし、建物の価値がなくなっても土地は残ります。
つまり、長い視点で考えた場合、戸建ての資産価値は土地に集約されていきますので、土地の価値、広さや道路付け、周辺環境などが大切になります。
マンションの資産性
マンションの場合、戸建てと異なり土地と建物を分けて処分することはできません。
一般的には、マンション価格は築25~30年で底値となり、それ以降は横ばいに近い価格帯で推移していく傾向です。
マンションの資産価値を左右する要素は、いろいろありますが、戸建て以上に立地条件に左右されます。地域によってマンション市場、戸建て市場と市場性の違いもありますが、マンションは駅近くの立地に建てられることが多いですので、立地条件が良くないマンションは他のマンションと比較するなかで取引対象から外れていくことが予測されます。
また、築年が経過するほど管理状況に差が出やすくなりますし、修繕積立金などのコスト負担が増えますので、管理状況がよい、管理組合が積極的に活動しているマンションが良いといえます。
まとめ
ここまでマンションと戸建ての違いを、4つの視点で比較しました。
- 住みごこち
- 維持管理
- 災害リスク
- 資産性
マンションか一戸建てかを考える際、それぞれのメリット・デメリットを比較することが大切です。