投稿日:2015年12月28日 | 最終更新日:2024年11月22日
はじめに
日本の空き家問題について新聞やニュース等で取り上げられることも増えました。
この空き家問題ですが、これから家を買われる方にも無関係ではありません。
この記事では、空き家問題とこれからマイホームを購入するにあたり、空き家に関する問題がどう関係する可能性があるのか?また、それに対して、どういった住宅購入の仕方が良いのかについて解説します。
日本の空き家問題
まずはじめに日本の空き家問題の現状と要因について解説します。
空き家の現状
平成30年住宅・土地統計調査 調査の結果(総務省統計局)によると、空き家は848万9千戸、総住宅数に占める割合(空き家率)は13.6%と過去最高になています。
空き家率の見通し
上記は、野村総合研究所による、空き家率の将来予測です。
シナリオ①、シナリオ②とありますが、
シナリオ①は現状のペースで空き家の除去が進んだ場合、
シナリオ②は現状の高いペースで空き家の除去が進んだ場合
の予測です。
現状のままいくと、2033年には、約4戸の1戸が空き家という予測です。
日本の空き家が増える理由
ただ、数字はともかく今後も空き家は増えると予測に間違いありません。
日本で空き家が増え続ける理由はとして以下のことが考えられます。
人口・世帯数減少
2015年国勢調査による1億 2709 万人から、
2053年:9,924万人(1億人割れ)
2065年:8,808 万人と推計。
併せて、老年人口割合(高齢化率)は、2015年の 26.6%から2065年には38.4%へ上昇と推計されています。
高齢化率は
65歳以上の人口が総人口に占める割合
介護施設や高齢者施設の利用
持家に住んでいる方も高齢になり、自力での生活困難や高齢での1人暮らしへの不安から介護施設や高齢者向け住宅へ転居がますます増加することが予測される。
日本人の新築指向
日本でも以前と比較すると、中古住宅の流通量は増えてきています。
ただ、欧米等と比べると中古住宅の流通割合には大きな差があります。
全住宅流通量の中古住宅の流通シェアを欧米と比較すると、
- アメリカ77.6%
- イギリス88.8%
- フランス66.4%
に対して、日本は14.7%にとどまります。
その要因として、以下のようなことが考えられます。
- 日本人の新築指向
- 新築の方が売りやすい(分譲会社側)
- 中古より新築優遇の税制
国土交通省「既存住宅流通市場の活性化」(令和元年)
中古住宅の評価の問題
日本の中古住宅の評価基準は、欧米などと比べると十分に確立されていません。
本来なら十分に住める住宅でも、中古住宅の評価がしにくい、欠陥や見えない不具合などを購入前に明らかにする制度(建物診断等)の活用が不十分といった不動産、住宅業界の問題があります。
税制(固定資産税の優遇)
建物が建つ土地は、建物のない土地(更地)に比べ、固定資産税が最大1/6まで優遇される税制上の特例があります。
ですので、建物を取り壊さずそのまま放置する人もいます。
また、解体費用がネックとなる場合もあります。
物件次第ではありますが、古家付の物件は不動産市場で流通しにくいこともあります。
このような現状に対し、
国も『空き家対策特別措置法』などの法律や予算を組んで対策を打ちだしています。
空き家対策特別措置法とは
空き家対策特別措置法とは、
適切な管理が行われていない空家等が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしており、地域住民の生命・身体・財産の保護、生活環境の保全、空家等の活用のために平成26年11月に制定された法律です(国土交通省)
空き家を放置することで、
建物の倒壊や火災、地域の衛生上の問題などが発生する可能性があるため、そういった問題に対処するための法律といえます。
具体的には、
- 倒壊の危険がある
- 衛生上の有害となるゴミが放置されている
- 周辺環境を著しく損なっている
- 近隣住民の生活に負担を与えている
といった空き家は、「特定空き家」に指定される可能性があります。
自治体から特定空き家に指定されると、
「助言・指導」⇒「勧告」⇒「改善命令」⇒「強制処分」
という段階を踏んで、空き家に対する対策を求められます。
そして、「助言・指導」に従わず「勧告」を受けた段階で、
固定資産税の特例対象から除外
されます。
つまり、固定資産税が最大6倍、都市計画税が最大3倍に上がることになります。
さらに、行政の指導・助言を無視し続けると、行政によって強制的に空き家が取り壊され、撤去費用を請求されることになります。
購入時に考える空き家に関するリスク
では、これからマイホームを購入する際、こういった空き家問題についてどのようなリスクが考えられるのでしょうか?
・購入した地域の空き家が増える
・空き家を所有する負担
に分けて解説します。
購入した地域の空き家が増える
空き家数、空き家率は地域によって差があります。
購入する地域、場所によっては、10年、20年後空き家が多いということも考えられます。
その場合、どういったリスクが考えられるか。
災害や防犯上のリスク
隣が空き家、周辺に空き家が多い場合、いくつかの危険性が考えられます。
- 台風や地震の際の倒壊の危険性
- 空き巣や窃盗など防犯上の危険性
- 空き家からの火災で被害を被る危険性
こういった危険性を取り除くために所有者に連絡、対応してもらうにしても、相応の負担もありますし、難しい場合も考えられます。
資産価値に対するリスク
自分の住む地域の空き家が増えると、防犯上、衛生上、美観上街としての魅力は薄れます。
その結果、その地域に住みたい、家を買う人も少なくなり、不動産取引も減ります。
これは、
所有する自宅の資産価値に直結する問題です。
家を売り時、売却価格を決めるために査定を行います。
査定には、周辺環境や流通性(取引の活発さ)が影響します。
売却するにしても、売却価格が低い、買い手がつかないといった事態になる可能性があります。
空き家を所有する負担
2つ目は、家を購入したあと
- 転勤や異動
- 相続
- 住み替え
- 親と同居
などで購入した家含め、空き家を所有する場合もあります。
その時に、うまく売却や賃貸できればよいですが、それが難しい場合、負担やリスクもあります。
維持費や相続税の負担
住まない家でも固定資産税、マンションであれば管理費や修繕積立金などの維持費はかかります。
また、相続不動産の相続税や固定資産税の負担が大きい、支払えないという場合もあります。
空き家の管理責任
前述の「空き家対策特別措置法」でも触れましたが、空き家を所有する場合、管理責任があります。
管理が行き届かず、万が一、近隣や通行人に対して被害を与えた場合などは、空き家の所有者として責任を問われる可能性があります。(建物の所有者責任)
こういったリスクに対して、空き家でも使える火災保険もありますが、取扱う保険会社が少なかったり、保険料が高く設定されている状況です。
また、空き家管理を業者に委託する方法もありますが、当然費用はかかります。
マイホーム購入時の注意点
こういった空き家に関するリスクに対して、家を買うときどういったことを注意すれば良いのでしょうか。
・エリア・場所の選定
・ライフプラン・人生設計
2つの点で解説します。
エリア・場所の選定
家を買う場所を決める際に影響するものはいろいろあり得ます。
- 職場へのアクセス
- 住み慣れた街
- 親世帯との近居
- 子育て支援の充実度
- 資産性(交通・生活利便性)
など。
前述の通り、空き家問題は資産性にも直結する問題です。
下記は、神戸市の9つの区別の空き家率を表したものです。
1つの区の中でも、場所や立地によって空き家数や空き家率の違いあるかと思います。
ただ、平成30年時点のデータですが、区別に見た場合でもこれくらいの違いがあります。
ですので、家を買う場所を決める1つの指標として、
- 空き家率やその見通し
- 人口、世帯数の予測
- 自治体の立地適正化計画
などを考慮することも必要です。
購入した家の出口(戦略)
空き家問題に関係なく家という資産を持つ以上、その出口(戦略)についても考える必要があります。
つまり、
最後、その家をどうするのかといった視点
選択肢はいくつかあります。
- 売却
- 住み替え
- 担保
- 賃貸
- 永住
担保というのは、
住んでいる家を担保として、老後の生活費や資金を調達するリバースモーゲージやリースバックを利用する場合を想定しています
購入時点で将来のことを想定する難しさはありますが、お子様の独立や親との同居、異動や転勤、老後のライフプランなど考えることも必要だと思います。
まとめ
2033年には4戸に1戸が空き家になる見通し
日本の空き家が増える理由
- 人口・世帯数の減少
- 介護・高齢者施設の利用
- 日本人の新築志向
- 中古住宅の評価方法
- 税制(固定資産税の優遇)
空き家対策特別措置法における所有者責任
購入時に考える空き家に関するリスク
- 購入した地域の空き家が増える
- 災害や防犯上のリスク
- 資産価値に関するリスク
- 空き家を所有する可能性
- 維持費や相続税の負担
- 空き家の管理責任
マイホーム購入時の注意点
- エリア・場所の選定
- 購入した家の出口(戦略)