投稿日:2021年8月11日 | 最終更新日:2023年11月3日

手付金とは

住宅購入では「手付金」の授受が行われます。

手付金
 不動産売買において、契約時に買主から売主に支払われるお金のこと

手付金は民法557条に規定される法的根拠にもとづくものです。

この記事でわかること

●手付金が支払われる目的
●手付金が支払われるタイミング
●知っておいたほうがよい手付金の意味
●手付金の相場

手付金の保全措置が必要となる場合
●手付金が準備できないときの対処法
●手付金と頭金の違い

一般の方が分かりにくい不動産取引を、より安全に進めて頂けるよう参考にして頂ければと思います。

手付金が支払われる目的

不動産売買における手付金の主な目的は2つです。

●売買契約が成立したことの証
●引渡し・決済までの法的関係を安定させる

不動産売買では取引金額が大きい一方、売買契約から引渡し・決済までに一定の時間を要します。通常1カ月前後、状況によってもっと長くなることもあります。

手付金は、売買契約が成立した証であるとともに、売買契約から引渡しまでの法律関係を安定させる意味があります。

売買契約を締結すると、売主も買い主も共に引渡しや決済に向けて動き出しますが、契約後に簡単に取り消すことができると、契約の相手方に多大な損失や負担を与えることになりかねません。

そこで、契約後から引渡しまでの契約関係を安定させ、確実に取引を完了できるよう手付金の授受が行われます。

手付金は法的根拠がない申込証拠金とは異なります。

手付金が支払われるタイミング

手付金は契約成立の証として、売買契約締結直後に買い主から売主に手渡されます。売買契約書にも手付金について規定され、契約書に署名・捺印後に現金で授受され売買契約の成立とします。

手付金の金額は大きくなる場合もあるため、振込での支払いに対応する会社もあります。

知っておいた方がよい手付金の意味

手付金は「売買代金の一部」に充当されることが一般的ですので、実質的に売買代金の一部前払いという意味があります。

手付金には、目的に応じて3つの種類があります。

  • 解約手付
  • 違約手付
  • 証約手付

解約手付

解約手付
 売主・買主に契約の解除権を留保するもの

不動産取引において、手付金が解約手付の場合、売主または買主が契約の履行に着手するまでは、買主は手付金を放棄し、売主は手付金の倍額を返還することで、任意に契約を解除することができます。

一方の当事者の意思のみで契約を解除でき、買主、売主とも損害賠償の責任は負いません。

但し、手付解除ができるのは「相手方が履行に着手するまで」であり、書面により通知する必要があります。

通常、不動産売買の手付金は解約手付の意味を持ちます。

違約手付

違約手付
 売買契約において、当事者が契約義務を果たさなかった(債務不履行)場合に、損害賠償として支払
 われるもの

買主に契約義務違反(違約)があった場合、手付金は没収され、売主に契約義務違反があった場合、手付金を返還とともに違約金として手付金を支払う意味があります。

つまり、違約による損害賠償の額を予め決めておくことで(損害賠償額の予定)、実際の損害額を証明することなく請求することができます。

手付金を違約手付とする売買契約もありますが、契約義務違反の違約金を「売買代金の10%」など、別途規定されることも多くあります。

証約手付

証約手付
 不動産売買契約が成立した証明として交わされる手付金という意味

売買契約を締結するとともの、支払う手付金がどういう意味をもつのかしっかりと確認しましょう。

手付金の相場は?

手付金は、一般的に売買代金の5~10%で設定されることが多いですが、決めれた金額があるわけではありません。

ただ、手付金には、解約手付として不動産取引の契約関係を安定させる意味がありますので、少なすぎても意味がありません。

一方で、手付金にはあまり高すぎると契約自体が進めにくいことに加え、契約の解除が困難となり解約手付としての意味がなくなります。

なお、宅建業者が売主の場合、手付金は売買代金の20%を超えてはいけません。
(宅地建物取引業法39条1項)

手付金の保全措置が必要となる場合

手付金 相場

手付金は、土地や建物が引き渡される前に交付される現金であるため、万一売主が物件を引き渡せない等の事態になった場合に、確実に買主に返還される必要があります。

宅建業者が自ら売主の場合、万が一宅建業者が倒産した場合、買主は物件の引き渡しを受けることはもちろん、支払った手付金すら返金されない可能性があります。

そういった場合のために、手付金に対する保全措置が規定されています(宅地建物取引業法41条)

宅地建物取引業者が売主の場合

原則として、手付金の保全措置が必要な取引は宅建業者が売主で以下の条件に該当する場合です。

工事完了前後手付金の額
未完成物件
の場合
売買代金の5%超え
または1,000万円超え
完成物件
の場合
売買代金の10%超え
または1,000万円超え

また、保全措置の対象となる手付金は、中間金等も含みます

そのため、契約時点の手付金の額が保全措置が必要のない範囲だったとしても、その後中間金を支払い、上記の範囲をこえた場合には保全措置が必要となります。

手付金の保全措置は、売買契約前の重要事項説明事項でもありますので、しっかりと確認しましょう。

手付金が準備できないときの対処法

今は、ほとんどの金融機関では物件価格だけでなく諸費用も融資の対象としていますので、自己資金は少ない場合でも住宅ローンの借り入れができれば家を買うことはできます。

ただ、手付金は売買契約時に必要となりますので、自己資金が少なく準備できないという場合もあります。

手付金の減額を交渉する

手付金の相場は売買価格の5~10%となりますが、下限金額が決められているわけではありません。そのため、手付金を準備できる範囲まで減額交渉することが考えられます。

ただし、前述の通り、手付金には引き渡しまでの契約関係を安定させるための意味があり、あまりに少ない金額だと手付金の意味がなくなってしまいます。

仲介不動産会社や売主の会社に、購入の強い意思を示すとともに慎重に交渉する必要があります。

身内や親せきから一時的に借りる

一時的に身内などから借り入れをすることが考えられます。

手付金は決済時に売買代金の一部に充当されますので、資金計画によっては融資金で借入した手付金を一部返済できる場合もあるでしょう。

110万円を超える金銭の授受は、借用書など金銭貸借を明確にしていないと贈与税の対象となる可能性がありますので注意してください。

手付金と頭金の違い

手付金と頭金、どちらも住宅購入時の自己資金として準備されることで混同されやすいものですが、その意味はまったく異なります。

手付金
売買契約の証明として授受されるお金

頭金
「物件価格-住宅ローン借入金額」
物件価格のうち借入金額以外の自己資金

例えば、物件価格:4,000万円、諸費用:300万円、必要資金4,300万円に対し、自己資金を400万円準備する場合、住宅ローンで借入が必要な額は、4,300万円-400万円=3,900万円となります。

そのため、仮に手付金が200万円(売買代金の5%として)だった場合、頭金は100万円(4,000万円-3,900万円)となります。

手付金と住宅ローン特約

通常、売買契約書には、売買契約後、住宅ローン融資の承認が得られなかった場合、買主は売買代金の支払い義務を果たさず、債務不履行責任を負うことを避けるために「住宅ローン特約」を規定します。

住宅ローン特約
買主が住宅ローンを借りられなかった場合に、違約金等の負担をすることなく、無条件で契約を解除することができる約定

この場合、ローン特約により契約は無条件で解除になりますので、支払った手付金も戻ります。

但し、住宅ローン特約をつけた売買契約においては、買主は期限内に、住宅ローンの承認を得るために積極的に活動する義務を負います。

ですので、買主として、住宅ローンの申込手続きや書類の準備などを怠った場合、この特約が使えない場合もあります(そういった裁判例もあります)

その場合、住宅ローン特約は適用されず債務不履行責任を負うことになりますので注意してください。

まとめ

不動産取引における手付金について解説しました。

手付金は、大きな金額の不動産取引を確実にすすめるために交付されるものですが、引渡し前に大きな金額を交付することになります。

手付金の意味や保全措置などを理解していただいて、少しでも安心できる不動産取引に役立ててもらえればと思います。

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