手付金とは
手付金とは、
不動産売買において、契約時に買主から売主に支払われるお金のことです。
この記事では、
- 手付金の目的
- 手付金の相場
- 手付金と頭金の違い
- 手付金と住宅ローン特約の関係
についてまとめました。
一般の方ではなかなか分かりにくい不動産取引を、より安全に確実に進めて頂けるよう参考にして頂ければと思います。
手付金の目的
手付金の目的は、
・売買契約が成立したことの証
・引渡し・決済までの法的関係を安定させる
といったことにあります。
不動産取引の場合、金額も大きくなる一方、売買契約から引渡し・決済までに時間を要します。
手付金を授受することで、売買契約が成立したことを証明するとともに、引渡しまでの法律関係を安定させるという意味があります。
ちなみに手付金は、
民法557条に規定される法的根拠があるものです。
法的な根拠のない申込証拠金とは異なります。
そして、通常手付金は「売買代金の一部」に充当されますので、実質的には売買代金の一部前払いという意味があります。
手付金には、目的に応じて3つの意味があります。
- 解約手付
- 違約手付
- 証約手付
解約手付
解約手付は、
売主買主に契約の解除権を留保するものです。
つまり、不動産取引において、
売主または買主が契約の履行に着手するまでは、買主は手付金を放棄し、売主は手付金の倍額を返還することで、任意に契約を解除することができます。
この場合、買主売主とも損害賠償の責任は負いません。
一般的に、不動産売買の手付金は解約手付の意味を持ちます。
違約手付
違約手付は、
売買契約において、当事者が契約義務を果たさなかった(債務不履行)場合に、損害賠償として支払われるものです。
買主に契約義務違反があった場合、手付金は没収され、売主に義務違反があった場合、手付金を返還とともに違約金として手付金を支払うという意味をもちます。
つまり、違約による損害賠償の額を予め決めておくことで(損害賠償額の予定)、実際の損害額を証明することなく請求できるようになります。
ただ、契約義務違反の場合の違約金については、売買代金の10%など、別途規定されることも多く、手付金の額と同じではないこともあります。
証約手付
証約手付は、
不動産売買契約が成立した証明として交わされる手付金という意味をもちます。
手付金の相場は?
手付金は、一般的には売買代金の5~10%で設定されることが多いです。
手付金は、不動産取引の契約関係を安定させる意味がありますので、少なすぎても意味がありませんし、多すぎても契約自体が進めにくくなりますし、解約手付としての意味がなくなってしまいます。
手付金の金額は決まっているわけではありません。
手付金の準備が難しい場合など、不動産業者や売主に相談してみましょう
宅建業者が売主の場合、手付金は売買代金の20%をこえてはいけません。
(宅地建物取引業法39条1項)
保全措置が必要となる手付金
宅建業者が自ら売主となる場合、万が一宅建業者が倒産した場合、買主は物件の引き渡しを受けることはもちろん、支払った手付金すら返金されない可能性があります。
そういった場合のために、手付金に対する保全措置が規定されています。
保全措置が必要な場合
原則として、手付金の保全措置が必要な取引は、宅建業者が売主の場合です。
また、手付金の額が、以下の場合は保全措置は必要ありません。
未完成物件 の場合 | 売買代金の5%以下 かつ1,000万円以下 |
完成物件 の場合 | 売買代金の10%以下 かつ1,000万円以下 |
また、保全措置の対象となる手付金は、中間金等も含みます。
ですので、契約時の手付金の額が保全措置が必要のない範囲でも、その後中間金を支払い、上記の範囲をこえた場合保全措置が必要です。
手付金の保全措置については、売買契約前の重要事項の説明事項でもありますので、しっかりと確認するようにしましょう。
手付金と頭金の違い

手付金と頭金、どちらも住宅購入時の自己資金として準備されることで混同されやすいものですが、その意味はまったく異なります。
手付金は、
売買契約の証明として授受されるお金
頭金は、
住宅ローン借入金額を決める際の「物件価格-借入金額」で決まるお金
例えば、
・物件価格:4,000万円
・諸費用:300万円
の必要資金4,300万円に対し、
自己資金として400万円準備できる場合、
住宅ローン借入が必要な額は、
4,300万円-400万円=3,900万円
となります。
この場合、
手付金:200万円(売買代金の5%とした場合)
頭金:100万円(4,000万円-3,900万円)
となります。
【関連記事】
・マイホームの頭金とは?頭金の額の平均、相場、自己資金や手付金との違いは?
・頭金なし住宅ローンで後悔しないための3つのポイント

手付金と住宅ローン特約
住宅ローンを利用して購入する場合、
もし、売買契約後、住宅ローン融資の承認が得られなかった場合、買主は売買代金の支払い義務を果たさず、債務不履行で損害賠償責任と負う、となると大変です。
そういった場合のために、通常、売買契約において「住宅ローン特約」を規定します。
住宅ローン特約は、
買主が住宅ローンを借りられなかった場合に、違約金等の負担をすることなく、無条件で契約を解除することができるという約定です。
この場合、契約は無条件で解除になりますので、支払った手付金も戻ります。
但し、住宅ローン特約をつけた売買契約においては、買主は期限内に、住宅ローンの承認を得るために積極的に活動する義務を負います。
ですので、買主として、住宅ローンの申込手続きや書類の準備などを怠った場合、この特約が使えない場合もあります(そういった裁判例もあります)
その場合、住宅ローン特約は適用されず債務不履行責任を負うことになりますので注意してください。
【関連記事】
・住宅購入者の味方!不動産売買契約の住宅ローン特約ってなに?
まとめ
ここまで手付金についてまとめました。
- 手付金はその目的に応じて3つの種類がある。
- 解約手付
- 違約手付
- 証約手付
- 手付金の一般的な相場は、売買代金の5~10%。
但し、宅建業者売主の場合は20%以下、
また、手付金の額によって保全措置が必要な場合がある。 - 手付金と頭金は違う
- 住宅ローン特約による解除で手付金は戻る
少しでも安心安全な不動産取引に役立ててもらえればと思います。