投稿日:2018年5月3日 | 最終更新日:2023年11月4日

はじめに

購入する住宅が決まると、重要事項の説明を受け売買契約書を交わします。

不動産売買契約では、民法をはじめ、建築基準法や都市計画法、宅地建物取引業法などさまざまな法律が関係し、初めて聞く言葉も少なくないと思います。

その中でも住宅ローンを利用して家を買う場合に重要となる「住宅ローン特約」について解説します。

この記事でわかること

●住宅ローン特約の意味
●確認すべき売買契約書の住宅ローンに関する内容
●住宅ローン特約による解除ができない場合
●融資承認期限が過ぎた場合の対応
●融資の承認期限は延長できる?
●ローン特約による解除で手付金・仲介手数料は返還される?

住宅ローン特約について理解しやすいように、売買契約から融資実行(決済)までの住宅ローン手続きは以下のようになっています。

  1. 売買契約締結
  2. 住宅ローン本審査申込
  3. 住宅ローン本審査承認
  4. 融資承認期限
  5. 住宅ローン契約(金銭消費貸借契約)
  6. 融資実行(決済・引渡し)

住宅ローン特約(融資特約)とは

住宅ローン特約(融資利用の特約)

買主の住宅ローンの承認がおりない、もしくは借入希望額の一部しか借りれない場合、契約を解除し、支払い済みの手付金や仲介手数料などを返還してもらうう約定

売買契約が成立すると、売主も買主もそれぞれ決済、引渡しに向けて契約上の義務を負います。

買主は手付金を除く残代金を支払う義務が生じ、契約上の義務を履行できない場合、債務不履行責任として損害賠償責任が生じます。

住宅ローン特約は、住宅ローンを利用して売買代金の支払いを考えていた買主が、審査の結果、借入ができなかった場合に契約を白紙解除し、債務不履行責任を負わないようにする特約になります。

つまり、住宅ローン特約は、融資を利用して住宅を購入する買い主が、審査が承認されなかった場合に、売買契約上の代金の支払い義務違反によって損害賠償責任を回避するための約定といえ、買い主のための取り決めといえます。

住宅ローン本審査は売買契約後

多くの場合、住宅ローンの事前審査(仮審査)を購入申込の段階で通していますが、事前審査と本審査では審査される内容が異なり、事前審査が問題なければ本審査も100%問題ないとは言えず、承認が得られないケースがあるためローン特約を盛り込みます。

それなら、住宅ローンの本審査承認が下りてから売買契約を締結すればよいと思われるかもしれませんが、本審査には売買契約書が必要となります。

これは、住宅ローン融資に関わる不正等を防止する意味で本審査には売買契約書を必要としています。

フラット(住宅金融支援機構)など売買契約締結前の本審査に対応する金融機関もあります。

住宅ローン特約に関する記載内容

住宅ローン特約を有効にするために、売買契約書には住宅ローンの手続きや期日について規定されます。

住宅ローン融資に関する記載事項

●審査申込をする金融機関の名称
●借入金額
●融資承認の取得期日

融資承認に向けての買主の義務
●融資の承認が得られなかった場合の対応
●住宅ローン特約による解除期限
●契約解除の方法

買主が住宅ローン融資に関して、いつまでに何をしなければならないかということが規定されますので、売買契約書の内容をしっかりと確認し、疑問点がある場合は担当者に確認しましょう。

住宅ローン特約の有効期限

住宅ローン特約には期限(融資承認期限)が設けられています。

融資承認期限
 住宅ローンの融資承認を取得しなければならない期限

融資承認期限は、引渡しの時期も考慮しながら、売主側と買主側の合意のもとで設定します。
通常は、売買契約の1ヶ月前後で設定されることが多いです。

融資申込みの手続きをわざと怠った場合は契約解除できない

ローン特約を設けることで、融資承認期限までの本審査の承認が得られない場合、買主は売買契約を解除できますが、融資の手続きを故意に遅らせたり、進めなかった場合、契約解除は認められません。

売買契約締結後は、買主には代金の支払い義務、売主には物件を引渡す義務が生じますが、その義務を履行するための行動を怠った場合にまでローン特約で買主は保護されません。

住宅ローン本審査の承認が得られない場合の対応

では、買主は融資承認に向けて動いたものの、期限までに住宅ローン本審査の承認がとれなかった場合どのようになるのでしょうか?

住宅ローン特約には「解除権留保型」「解除条件型」があります。

住宅ローン特約(解除権留保型)

解除権留保型
 契約解除には買主による解除権の行使が必要

つまり、融資承認を得られないまま承認期日を経過しても当然に契約が解除されるわけではなく、買主による解除の意思表示があってはじめて契約が解除されます。

解除権留保型の場合、売買契約書に「買主は…契約を解除することができる」といった文言とともに、融資承認期限とは別に、解除期限(解除する意思の通告期限)を盛り込みます。

注意なのは、解除期限を過ぎてしまうと、ローン特約による解除はできなくなる点です。

住宅ローン特約(解除条件型)

解除条件型
 契約解除の条件がそろえば自動的に解除になる

解除条件型の場合、期限までに本審査の承認が下りない場合、買主の意思に関係なく自動的に契約が解除となります。

このように解除権留保型と解除条件型では、承認が得られないまま期日を過ぎた場合の取り扱いが異なりますので、売買契約書の内容がどちらになっているかしっかりと確認しましょう。

住宅ローン特約の承認期限の延長

融資承認に向けて動いているものの、書類の不備や暦の関係、またそもそもタイトなスケジュールになっているなどで、期限までに承認が間に合いそうにないという場合、契約の解除権の取り扱いになるというわかではありません。

売主に相談、承諾のもと、融資の承認期限を延長することもあります

売買契約を完結させる意味では、融資承認時期が遅れたとしても、最終的に融資実行に間に合えば良いわけです。
また、場合によっては、売主と相談のうえ、決済・引渡し日の延期することもあります。

売主からみても、ローン特約で契約解除になり新たに買手を探す負担は非常に大きなものです。これまで費やした時間も無駄となります。

予定より時間がかかるだけで売買契約をすすめることができるのであれば、期日の変更に応じてくれることもあります。

住宅ローン特約による解除と手付金・仲介手数料

最後に、住宅ローン特約によって売買契約が解除された場合の手付金と仲介手数料の取り扱いについて解説します。

手付金

手付金は、売買契約時に契約成立の証として買主から売主に交付されるものです。ローン特約による解除となった場合、すでに支払った手付金は返還されます。

売買契約書にも、ローン解除になった場合の取り扱いとして規定されます。

仲介手数料

仲介手数料
 不動産会社の仲介業務を通じて物件を購入するときに、売買契約成立の報酬として支払うもの

多くの不動産会社では、売買契約時に仲介手数料の半金、残り半金を決済・引渡し時に請求するというかたちをとっています。

では、住宅ローン特約による解除の場合、すでに支払った仲介手数料は返還されるのでしょうか。

この点について、不動産会社と仲介業務や報酬について取り交わす媒介契約書の内容によります。

国が定めた標準的な媒介契約(標準媒介契約約款)では以下のように規定されています。

融資の不成立を解除条件として締結された後、融資の不成立が確定した場合、又は融資が不成立のときは甲が契約を解除できるものとして締結された後、融資の不成立が確定し、これを理由として甲が契約を解除した場合は、乙は、甲に、受領した約定報酬の全額を遅滞なく返還しなければなりません。

国土交通省「宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款 

そのため、ローン特約による解除の場合、仲介手数料は返還されます。

ただし、不動産会社によって媒介契約書の内容が異なる可能性もありますので、しっかりと内容を確認したうえで署名捺印するようにしてください。

まとめ

住宅ローン特約について解説しました。

この特約は、住宅ローンを利用して家を購入する買い主の保護を目的とする約定で、売買契約書のなかでも特に大切な条項となりますので、売買契約書の内容をしっかりと確認してください。

また、住宅ローン特約には審査を申し込む金融機関名を記載することが一般的です。後悔のない住宅ローン商品を選ぶために、事前に住宅ローンの検討をしっかりしたうえで売買契約にのぞむことも大切です。

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