はじめに
購入する住宅が決まると、重要事項の説明を受け、売買契約書を交わすこととなります。
不動産の売買契約では、民法をはじめ、建築基準法や都市計画法、宅地建物取引業法などさまざまな法律が関係します。
契約時に初めて聞く言葉も少なくないと思います。
その中で「住宅ローン特約」があります。
住宅ローンを利用する場合、大切な「住宅ローンの特約」の内容と注意点をまとめました。
売買契約契約後の流れ
住宅ローン本審査申込み
↓
住宅ローン本審査承認
↓
融資承諾期限
↓
住宅ローン契約(金銭消費貸借契約)
↓
融資実行(引渡し)
住宅ローン特約(融資特約)とは
住宅ローン特約(融資利用の特約)とは
買主の住宅ローンの承認がおりない、もしくは借入希望額の一部しか借りれない場合は、契約を解除し、支払い済みの手付金や仲介手数料などを返還してくださいという約束です。
売買契約が成立すると、売主も買主もそれぞれ決済、引渡しに向けて契約上の義務を負います。
買主には、手付金を除く残代金を支払う義務が生じます。そして、
この契約上の義務を履行できない場合、債務不履行責任として損害賠償責任が生じます。
住宅ローン特約は、住宅ローンを利用して売買代金の支払いを考えていた買主が、審査の結果、借入ができなかった場合に、契約を白紙解除し債務不履行責任にならないようにするための特約になります。
売買契約書には、
・融資利用の有無
・融資の申込先
・融資金額
・融資承認取得期日
が記載されます。
事前審査と本審査
それなら、住宅ローンの本審査承認が下りてから契約手続きをすればよいと思われるかもしれません。
ただ、基本的に住宅ローン本審査には売買契約書が必要となっており、売買契約後に本審査という流れになっています。
融資する金融機関からすると、住宅ローン融資に関わる不正等を防止する意味で売買契約書が必要としています。
フラット(住宅金融支援機構)など、1部売買契約締結前の本審査に対応する金融機関もあります。
多くの場合、購入申込時点で住宅ローンの事前審査を通していることが多いです。
ただ、事前審査と本審査では審査内容が異なります。
事前が大丈夫でも本審査に通らない可能性もあります。
ですので、
住宅ローンの承認が下りなかった場合は、契約解除とともに、支払った手付金は返還してください
という約束をしておくわけです。
これまで住宅ローン特約がない契約書をを見たことがありませんが、記載されていない契約書もあるようです。
いずれにしても、まず、住宅ローン特約の条項が入っているか、しっかりと確認が必要です。
住宅ローン特約の有効期限
また、住宅ローン特約には期限(融資承認期限)が設けられています。
融資承認期限は、
その期限までに住宅ローンの融資承認を取得してくださいという期限です。
融資承認期限は、引渡しの時期も考慮しながら、売主側と買主側の合意のもとで設定します。
通常は、売買契約の1ヶ月前後で設定されることが多いです。
住宅ローン本審査が通らなかった場合
では、期限までに住宅ローン本審査の承認がとれなかった場合どうなるか?
契約内容に応じて解除権留保と停止条件があります。
解除権留保型
買主が契約解除を判断する
停止条件型
自動的に契約が解除となる
解除権留保の場合、契約書に「買主は、…契約を解除することができる」といった文言が入っています。
そして、融資承認期限とは別に、解除期限(解除する意思の通告期限)を設定します。
ここで注意なのは、
解除期限を超えてしまうと、住宅ローン特約による解除はできなくなります。
一方、停止条件の場合、期限までに本審査の承認が下りない場合、自動的に契約が解除となります。
融資承認期限の延長
ただ、融資承認期限までに住宅ローン審査が下りない場合、必ず契約解除になるかというとそうではありません。
何らかの事情で住宅ローン承認期限に間に合わない場合には、
売主の承諾のもと、承認期限を延長することも可能
です。
最終的に融資実行に間に合えば良いわけです。また、場合によっては、売主と相談のうえ、決済・引渡し日の延期もできることもあります。
売主サイドからみても、契約解除になり、新たに買手を探す負担は非常に大きなものです。これまで費やした時間も無駄となります。
住宅ローン特約が適用されない場合
これまで見てきたように、住宅ローン特約は、住宅ローンを利用する買主の融資が得られない場合のリスクヘッジのための約定です。
但し、注意すべき点があります。
住宅ローン特約による解除をするためには、買主自身が、
期限内の本審査承認に向けて努力すること
が条件となります。
故意は当たり前として、必要な書類を準備せず、住宅ローン審査の手続きを遅らせたり、迅速に進めなかったり等の場合、期限内に本審査承認が得られなくても住宅ローン特約による解除ができません。
売買契約を締結した以上、買主は代金支払い義務を負うわけで、そのための融資利用について必要な手続きをしなかった場合、仕方がないと言えます。

まとめ
住宅ローン特約は、住宅ローンを利用して家を購入する方の契約上のリスクをなくすための約定です。
とても、大切な特約となりますので、重要事項説明ならびに売買契約書の説明でしっかりと内容を確認するようにしてください。
また、住宅ローン特約を活用する意味でも、住宅ローン商品の検討を売買契約までに準備しておくことも必要です。
