投稿日:2017年10月2日 | 最終更新日:2024年11月22日
マンションは管理を買え
「マンションは管理を買え」という言葉を聞かれたことがあると思います。
マンションの内見にいくと、部屋はきれいに使用されており、状態はいい感じでも、共用部の管理状況がいまいちという物件もあります。
中古マンションを購入する場合、一戸建てと異なり、居住スペース(専有部分)だけでなく、共用施設や供用部分の管理状況も確認する必要があります。
マンション共有部分
マンションの所有者(以下、区分所有者)それぞれが専有する居住スペース(専有部分)に対し、マンションの住人全員で使用・管理する共用のスペース
- 駐車場
- 駐輪場・バイク置き場
- エントランス
- エレベーター
- バルコニー・専用庭
- ゴミ捨て場(敷地内)
- 宅配・メールボックス
- メーターボックス
- など
共用部には、2種類あります。
・区分所有法という法律で定められた「法定共用部分」
・管理組合の管理規約で定められた「規約共用部分」
マンションによって共用部分の取り扱いが異なる場合もあります。
管理規約
区分所有者が法律(区分所有法第30条)に基づいて、それぞれの管理組合がその状況に応じて運営上のルールを定めたものです。
マンション購入後は、管理組合の一員として、共用部分の維持管理を共同で行っていくことになります。
ですので、管理組合が維持管理がしっかりと行われているか確認が必要です。
その管理状況を確認する重要な資料の1つが、重要事項調査報告書です。
重要事項調査報告書とは
重要事項調査報告書とは、マンションの管理会社が作成する資料で、主にマンションの管理状況について詳細に書かれた資料です。
中古マンションの売買においては、多くの場合、売主側の仲介会社が管理会社から取得しています。
重要事項調査報告書の記載事項
重要事項調査報告書に、主に記載されている事項です
- 管理体制
- 理事会・総会の開催
- 管理費・修繕積立金の額
- 管理費・修繕積立金の変更予定の有無
- 管理組合の収支状況
- 管理費・修繕積立金の滞納状況
- 長期修繕計画の有無
- 大規模修繕計画の有無・実施予定
- 専有部分の用途制限
- 管理形態(管理員の勤務状況等)
- 駐車場の空き状況・使用料など
- 自転車・バイク置き場の空き状況、使用料
- CATVやアンテナ、インターネット設備
など
こういったことを事前に確認することで、そのマンションの運営や管理状況を確認することができます。
一般社団法人マンション管理業協会のHPを見ると、重要事項調査報告書の様式や記載事項のイメージをご理解頂けると思います。
重要事項調査報告書のチェックポイント
重要事項調査報告書には、いろいろな事項が記載されていますが、特にチェックするポイントを挙げてみました。
管理費・修繕積立金の変更予定
物件資料にはその時点での管理費や修繕積立金が記載されていますが、変更予定、いくら上がるのかといった点はしっかり確認しましょう。
また、逆に大規模修繕工事は10年~15年で実施される場合が多いです。
この点、世帯規模にもよりますが、大規模修繕をそろそろ迎えそうな築年数のマンションで、修繕積立金が低すぎる場合、値上げや一時金の徴収などの可能性踏まえ確認したほうが良いです。
管理費・修繕積立金の滞納
管理費、修繕積立金の滞納状況は、専有部分(購入予定の住戸)だけのもの、マンション全体のものとあります。
売主が滞納している場合、購入した新所有者に滞納額も引き継がれます。
滞納の有無、有の場合の清算について、しっかり確認しましょう。
また、マンション全体での滞納額、割合、滞納者に対する管理組合の対応なども、そのマンションの運営、管理状況を判断する上で重要です。
大規模修繕工事の積立状況
大規模修繕工事を実施する、した時期によって積立状況は変わると思いますが、長期修繕計画と合わせて、必要な積立がなされているか確認が必要です。
専有部分の使用制限
多くの管理組合では、専有部分を民泊で使用することを禁止し、住居専用で使用することを管理規約等で定めています。
重要事項調査報告書の確認方法
前述の通り、重要事項調査報告書は、売主側の仲介会社が管理会社から取得しています。
ですので、売主と買主の仲介会社が違う場合でも、仲介会社を通じて取得し確認することができます。
ただ、取得費用がかかるからか、内覧の段階で重要調査報告書を取得していない仲介会社もあるようです。
また、重要事項調査報告書の日付が古い場合があります。
時間が経っていると、修繕積立金の変更や長期修繕計画等が変わっている可能性もあります。
重要事項調査報告書を確認するタイミング
重要事項調査報告は、購入を前向きに検討したい思った段階では必ず確認したほうが良いです。
つまり、不動産購入申込をする前には確認したほうが良いです。
不動産購入申込
売主に対して、書面で希望金額や条件を記載して、正式な購入申込の意思表示をすること※売買契約ではありません
確かに、重要事項調査報告書の内容は、売買契約の前に行われる重要事項説明で確認できる内容が含まれています。
不動産のような大きな買い物では、宅地建物取引業法で、売買契約締結前に、その物件の重要な事項について説明することが義務付けられています。
ただ、この段階でマンションの管理状況を確認できたとしても、購入の意思表示をした後であり、売主も不動産会社も売買契約に向けて動いている状況です。
また、不動産売買取引では、重要事項説明と売買契約が同日に行われることが多いです。
管理状況に大きな問題があり、購入を見直すとしても、購入申込の前のタイミングで確認する方が良いです。
マンション管理組合の意識も変わっている
案内するマンションでも、戸数や機械式駐車場の有無などから修繕積立金の額がかなり低いと思われる物件もあります。
また、共用施設の割には、管理費が高く、修繕積立金が低く設定されていると感じられるマンションもあります。
この点、平成13年8月1日に施行された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」からマンション管理組合の管理に対する意識は徐々に変わってきました。
一般社団法人マンション管理業協会の調査では、中古マンションの管理を受託した経緯として、他社管理物件からの受託が57.6%を占めるそうです。
これは、管理組合が管理会社を変えている(リプレイスメント)割合です。
つまり、管理組合がしっかり機能しているマンションでは、管理の質やコスト面(管理費)についても、しっかり話し合いながら運営されているということです。
一般社団法人マンション管理業協会「令和2年マンション管理受託動向調査」
まとめ
中古マンションの管理状況を知るための資料「重要事項調査報告書」についてまとめてきました。
築年数が浅いマンションでは、管理組合の活動や積立状況などを確認することが難しい場合もあります。
ただ、物件内覧だけでは分からないことは多くありますし、特に会計や専有部分や共用部分の使用方法、制限の内容などは分かりません。
管理状況が悪いマンションは資産価値にも影響します。
のちのち後悔しないように、管理状況もしっかりと確認してください。