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日本人の貯蓄額
『1,798万円』
これは総務省の「家計調査報告」(2018年1~3月)で発表された日本人の1世帯当りの平均貯蓄額(2人以上の世帯)です。
ちなみに持家率は86.2%となっています。
この貯蓄額に驚いた方もいるかもしれませんが、年代別に見ると以下のようになっています。
年代 | 貯蓄額 |
---|---|
30~39歳 | 580万円 |
40~49歳 | 1,073万円 |
50~59歳 | 1,788万円 |
60~69歳 | 2,383万円 |
70歳~ | 2,305万円 |
世界的にみれば日本人の貯蓄率は高くないという見方もありますが、貯蓄をする大きな理由の1つは、将来に対する不安です。
・病気になったら?
・収入が減ったら、仕事がなくなったら?
・老後資金をどうしよう?
など、これからの日本の社会状況も含め、将来不安を感じていることの裏返しとして貯蓄があります。
家を買う時に感じる不安
ハイアス・アンド・カンパニー株式会社さんが2017年に行った現在の住まいが持家でない20歳から49歳までの男女に行った「住宅購入に関する消費者アンケート」があります。
■マイホーム取得にあたって不安に感じることがありますか?

実に、マイホームを購入しようとしている9割の人は不安を感じています。
家を買うときの具体的な不安
ではどういった点に不安を感じているのでしょうか?
■マイホーム取得に当っての不安の具体的内容はどういったことですか?
無理のない返済計画を立てられるか分からない | 59.3% |
必要な自己資金を用意できるか分からない | 47.9% |
将来の収入の見通しが立たない | 39.4% |
有利な融資、ローンを選べるかが分からない | 35.4% |
予算内で欲しい家が得られるかが分からない | 31.6% |
良い場所に土地、物件が見つかるかが分からない | 28.9% |
将来の家族計画(結婚、子育ての予定)が立たない | 27.0% |
将来の支出の見通し(教育・医療・老後)が立たない | 22.4% |
資金調達が予定通りいくかが分からない | 20.5% |
将来どこで何をしているか(職・居住地)見通しが立たない | 20.5% |
物件価格や建築費が適正化が分からない | 12.2% |
何から始めていいかが分からない | 11.8% |
住宅の性能などの十分な情報がない | 6.1% |
不安に感じる内容はいろいろですが、そのほとんどがお金に関することです。
そして、同じアンケートで、
マイホーム取得の活動・計画を具体的に進めるにあたって、困難で特に重要だと思うことはなんですか?
という質問に対して、54.7%の人が「無理のない返済計画を立てること」を挙げ1位になっています。
住宅購入者が求めているアドバイス・提案
住宅取得の不安解消、計画・活動を進めるために、住宅会社や不動産会社に求めるもの
という質問に対する回答は以下のようになっています。
無理のない返済計画への助言 | 47.6% |
良い場所の土地・物件の提案 | 35.1% |
税制優遇などの活用の助言 | 34.1% |
融資な融資、ローンの選択の助言 | 32.4% |
物件価格や建築費についての十分な説明 | 30.4% |
将来の生活像(収入・支出・家族計画など)を踏まえた住宅選びの提案 | 22.0% |
住宅の性能などの十分な情報提供 | 21.6% |
将来の生活の全体像(収入・支出・家族計画など)の見える化 | 20.9% |
住宅購入・家づくりの進め方の説明 | 11.5% |
自分や家族の要望をまとめる助言 | 5.4% |
不安に感じる内容がお金のことですので、住宅会社や不動産会社に求めるものもお金の関することが多くを占めます。
家を買う不安の多くがお金に関することの理由
「なぜ、多くの方がマイホーム購入のお金に関することに不安を感じるか」
その原因がこのアンケート結果にも表れています。
それは、『将来の生活の全体像(収入・支出・家族計画など)の見える化』を求めている点です。
土地や建物選び、家づくりは、分かりにくい点もありますが、目に見えるものであり、実際に確認できます。
一方、お金の面について、
将来の状況を把握できない
長期で考えることが難しい
と感じることから不安も大きいと考えられます。
子どもの成長やリタイアに向け、将来の収入や支出の見通しが変わると予測されるなか、何千万円という住宅ローンを組む上で将来に不安を感じるのはある意味当然です。
つまり、そういった不安を解消するために、
将来の生活について、見える化(可視化)を求めている
ということです。
その将来の生活や家計の状況を見える化する代表的な方法が、ライフプランを作成することです。
家を買う不安を解消するライフプランって何?
将来の生活や家計の状況を見える化する代表的な方法が、
ライフプランを作成することです。
ライフプランやキャッシュフロー表を作成したことのある人はそんなに多くはないと思います。
以下ライフプランの1つの例です。
ライフプラン・キャッシュフロー表
ライフプラン・キャッシュフロー表とは、その名の通り世帯のキャッシュ(お金)のフロー(流れ)を示すものです。
収入の見通し
・世帯の収入
・将来の年金収入
・その他の収入(保険の満期金や解約返戻金、家賃収入など)
支出の見通し
・生活費
・保険料
・住宅関連費用
(固定資産税、管理費、修繕積立金、リフォーム積立など)
・住宅ローン返済額
・子ども関連費
・税・社保
・その他借入金返済
・その他支出
・予備費
こういった収入と支出の見通しを、お子様の進学や結婚、自身の退職、リタイアなどライフイベントに沿って客観的に把握することができます。
物価上昇率や教育費の上昇率も加味されますが、生活費の上昇率など家族構成に応じて設定することもできます。
住宅購入後の年間収支の推移

キャッシュフロー表から年間の収支状況をグラフ化したものです。
年間収支は、毎年の貯蓄額の見通し、もしくは貯蓄を切り崩す額といえます。
住宅購入後の貯蓄推移

世帯の貯蓄がどのように推移するかを表すグラフです。
現役時代の貯蓄推移、リタイア後の貯蓄推移などを確認しながら、無理のないマイホーム購入計画になっているかを確認することができる、資料の中でも一番重要なものです。
ライフプランを作ると見えてくるもの
家計の状況や収入の見通しの再確認
ライフプラン・キャッシュフローを作成するために、家計の状況や今後の収入の見通しなどを知る必要がありますが、しっかりと把握されている方はあまりいないと思います。
だからこそ、マイホーム購入という大きな買い物をするタイミング、生活環境や支出状況が変わるタイミングで、今まで把握してこなかった家計や収入のことを確認することは意味があります。(改めて知った収入や退職金、年金などの見通しに驚かれる方もいます。)
また、支出についても、改めて確認すると、以外に無駄や節約できるものが分かったりします。(時々勃発するのが、ご主人の小遣いの額に関する攻防です…)
場合によっては、ヒアリングさせて頂いた内容でキャッシュフローを作成させて頂き、毎年の貯蓄額を算出させて頂いたところ、実生活ではこんなに貯蓄できていない、できるはずがないということがあります。
つまり、ご本人でも把握できていない、見えないお金を使っていることがあるということです。
【関連記事】
▶マイホーム計画中の方へ~10年後の住宅ローンや保証、家計はどうなる?~
必要な教育費は?
人生の3大資金として住宅資金・教育資金・老後資金といわれます。
- 教育資金が一番かかる時期までにどれくらいの資金が必要か?
- 住宅ローン返済しながらでも問題ないか?
- 必要な額をどうやって貯蓄するか?
皆さん考えられます。
国も子どもの教育費の負担を減らし、子育ての負担を減らそうと考えています。ただ、日本の社会状況もあわせて考えると現時点であまり期待しないほうが良いでしょう。
ライフプランを作成すると、どの時期に、どれくらいの教育資金が必要か、教育費が一番かかる時期に、家計的に問題なく生活ができるかを知ることができます。
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▶教育資金はいくら必要?住宅ローン返済と教育費の準備~保険?運用?それとも繰り上げ返済?~
リタイア後の必要資金や収入
リタイアを考えられる年齢は人それぞれですが、現在の年金の支給開始予定である65歳を想定される方が多いです。
年金以外に個人で確定拠出年金や個人年金保険などでリタイア後に備えている方も少なくありません。
今後高齢者の働き方も変わる可能性もありますが、基本的にはリタイア後の生活は、年金収入とその時点の貯蓄でまかなう前提で考えたほうが良いです。
ライフプランを作成すると今のまま年金を掛け続けた場合の年金収入見通しが分かります。
30年後の年金の支給状況は変わる可能性がありますが、老後に必要な資金と年金収入から、リタイア時点での必要な貯蓄額の目安を知ることができます。
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▶老後資金はいくら必要?~マイホーム購入と老後の生活の関係~
マイホーム購入とライフプラン
マイホーム購入を考えている方の不安は、人によっても違います。
ただ、お金に関する不安については、ライフプランやキャッシュフロー表を作成することで、不安を見える化し、解消できることは少なくありません。
一番不安を感じている人の多い『無理のない返済計画』についても、予算や住宅ローンの返済計画が家計にどれくらい影響するのかを客観的に知ることができます。
そして、ライフプランを作成することで、将来必要となる教育費や老後資金のために、
・毎年どれくらいの貯蓄が必要か?
・そのために支出の見直しなど必要か?
・そのためにマイホーム購入予算はいくらが適正か?
を知ることができます。
住宅ローン返済が支出に占める割合は少なくありませんし、2年、3年で終わるものではありません。20年、30年続く住宅ローンという支出を前提として判断しないと、のちのち生活が苦しいとなりかねません。
住宅ローン商品選びにも影響
また、貯蓄推移が分かると、住宅ローン返済に対して、その家庭がどれくらいのリスクをとれるかということが分かります。
住宅ローン商品の金利タイプや返済期間、返済方法などを決めるとき、より返済に対するリスクがとれるほうがより有利な住宅ローン商品を選択することができます。
ただ、1人1人とれる返済リスクは違います。そのリスクを知るためにもライフプランを作成し、より有利な住宅ローン商品を選択することに活用できます。
ただ、1つ注意なのは、作成する精度や見通しが悪いと意味がないということです。
ライフプランの作成は面倒な作業かもしれません。ただ、住宅購入後の生活に不安を抱えたままで住宅購入をすすめるのはNGです。