はじめに
住宅ローン金利タイプには、
・変動金利
・全期間固定金利
・固定期間選択型
と大きく3つあります。
このうち、固定期間選択型の住宅ローンについて、
当初固定する期間によって、3年、5年、7年、10年、15年、20年など、あります。
そして、期間選択型の商品の中では最も選ばれているのが当初10年固定の住宅ローンです。
固定期間選択型を選ばれる方の54.9%の方が10年固定を選ばれています。
(令和2年度民間住宅ローンの実態に関する調査)
住宅ローン10年固定金利は、借入から10年間金利が固定される住宅ローンです。
下表は、住宅金融普及協会の2021年6月の10年固定金利の金利と金融機関の一覧表になります。
金融機関 | 当初10年固定金利 |
---|---|
中国銀行 | 0.45 |
三井住友信託銀行 | 0.52 |
auじぶん銀行 | 0.525 |
ソニー銀行 | 0.55 |
住信SBIネット銀行 | 0.58 |
みずほ銀行 | 0.6 |
りそな銀行 | 0.645 |
イオン銀行 | 0.67 |
このようなランキング形式の金利情報を参考にする際、注意しなければならない点もあります。
特に、当初10年固定含めた期間選択型の住宅ローンは、
固定期間終了後の金利が重要
ということです。
住宅金融普及協会「住宅ローン金利情報」(2021年6月)
※兵庫県で利用できる住宅ローン
固定期間終了後は、変動金利になるか再度、固定期間選択型の金利タイプを選ぶかになります。
この記事では、変動金利や全期間固定と比べても分かりにくい固定期間選択型の住宅ローン商品について、10年固定を例に選ぶ際の注意点をまとめました。
期間選択型の住宅ローン商品を検討されている方は、どの商品を選ぶかも含めて参考になるはずです。
借入(実行)金利の決まり方
10年固定金利の説明をする前提として、住宅ローンの借入金利がどのように決まるかを知って頂きたいと思います。
実際に皆さんが契約する住宅ローンの借入金利は次のように決まります。
借入金利=基準金利-引下げ金利
金利は毎月変わる可能性がありますが、ほとんどの金融機関が融資を実行する月の金利を適用金利としています。
基準金利(店頭金利)は、
住宅ローン金利の「定価」のようなもので、各金融機関は金利タイプごとに基準金利を決めています。
基準金利は、経済情勢や国の金融政策、金融機関の判断で変わることがあります。
引下げ金利(優遇幅ともいう)は
基準金利から引き下げる金利です。
引下げ金利を決まっている金融機関もあれば、審査結果(人)によって引下げ金利が変わる金融機関があります。
借入金利(実行金利)とは、
住宅ローン契約者に適用される金利です。
実行金利ともいいます。

10年固定期間終了後はどうなる?

では、10年間は金利が固定されるとして、固定期間が終了した後の金利はどうなるのでしょうか?
その際にとりうる選択肢によって変わります。
- 変動金利になる
- 再度期間選択型の金利タイプを選び直す
- 他の金融機関に借り換える
以下、分かりやすいようにauじぶん銀行を例にみてみます。
変動金利になる
10年間の固定期間終了後、何もしなければ変動金利になります。
ただ、ここで注意なのは、変動金利になると言っても、
その時点の変動金利がそのまま適用されるわけではありません。
10年固定(auじぶん銀行)の金利
【当初10年間の金利】0.525%
【基準金利】2.5%
【当初固定期間の引き下げ幅】-1.975%
【11年目以降の金利】1.541%
【基準金利(変動金利)】2.341%※
【固定期間終了後の引き下げ幅】-0.8%
※2021年6月
※基準金利が借入から10年後も変わっていない前提
金利 | |
---|---|
当初10年間 | 0.525% |
11年目以降 (変動金利) | 1.541% |
固定期間終了後、それまでの0.525%から1.541%に上がります。
これは、auじぶん銀行に限らずですが、当初固定期間と固定期間終了後の引き下が幅(優遇幅)が違うためです。
つまり、10年間低い金利で固定する代わりに、11年目以降の引き下げ幅は少なくなるということです。
住宅ローン契約時点で、固定期間終了後の引き下げ幅も決まっています。
固定期間終了後の返済額
では、これを返済額でいうとどれくらい変わるか?
下記事例での毎月の返済額は以下のようになります。
【借入金額】3,500万円
【返済期間】35年
【返済方法】元利均等返済(ボーナスなし)
毎月の返済額 | |
---|---|
当初10年間 | 91,242円 |
11年目以降 (変動金利) | 103,066円 |
返済額でいうと、それまでより約12,000円近く増えます。
つまり、固定期間の10年金利上昇がなくても、繰り上げ返済などしない限り、毎月の返済額は増えるということです。
再度、期間選択型の商品を選ぶ
10年の固定期間終了時点で再度、固定期間選択型の商品を選ぶことができます。
再度10年固定の商品を選んだ場合の金利は以下の通りです。
auじぶん銀行の場合(2021年6月)
【当初10年間】0.525%
【基準金利】2.5%
【当初期間の引き下げ幅】-1.975%
【11年目以降】1.7%
【10年固定の基準金利】2.5% ※
【当初期間終了後の引き下げ幅】-0.8%
借入金利 | |
---|---|
当初10年間 | 0.525% |
11年目以降 (10年固定) | 1.7% |
再度、固定期間選択型を選んでも、変動金利を選んだ場合と同様、適用金利は上がります。
先程と同じ事例の場合、毎月の返済額は以下のようになります。
【借入金額】3,500万円
【返済期間】35年
【返済方法】元利均等返済(ボーナスなし)
毎月の返済額 | |
当初10年間 | 91,242円 |
11年目以降 (10年固定) | 104,999円 |
返済額は13,700円ほど上がります。
もし、10年間の間に経済情勢などで基準金利が上がった場合、11年目以降の金利、返済額もさらに上がります。
金融機関によって基準金利、引き下が幅は異なります。
10年固定の住宅ローンに関わらず、
当初固定期間選択型の商品を選ぶ際、
11年目以降の金利も含めて判断する
必要があるということです。
他の金融機関に借り換える
最後に、固定期間終了時点で他の金融機関に借り換えた場合です。
その時点で、他の金融機関でより条件のよい住宅ローンがあれば切り換えも考えられます。
ただ、借り換えする際の注意点もあります。
・事務手数料や登記費用など諸費用がかかる
・借り換え先の審査をクリアする必要がある
・現在の借入の抵当権を抹消できる
家を買ってから10年後の収入や年齢、健康状態、物件の担保価値など総合的に判断されますので、その時点で必ずしも借り換えができるかは分かりません。
住宅ローン10年固定を選ぶ理由
では、どういった時に10年固定の住宅ローン商品を選ぶのが良いのでしょうか。
当初10年固定の住宅ローンのメリットは、低い金利で10年間固定できる点です。
- 10年後、繰上げ返済資金が入る予定
- 住宅ローン控除を有効活用するため
こういった場合は、10年間の金利上昇のリスクをなくしつつ、積極的に検討することができます
当初10年固定の注意点
最後に、当初10年固定の注意点をお伝えします。
家計に対する影響
10年固定金利タイプは、固定期間終了後の金利が上昇し、返済額が増えます。
購入から10年というタイミングで、生活費や教育費、メンテナンス費用など家計の支出も変化している可能性があります。
ですので、返済額の上昇が家計に与える影響を、ライフプランなど意識しながら判断する必要があります。
【関連記事】
マイホーム計画中の方へ~10年後の住宅ローンや保証、家計はどうなる?
変動金利のようなルールがない
固定期間終了時点の金利は、経済情勢等によって変わる可能性があります。
その際、毎月の返済額が大幅に増えた場合でも、変動金利タイプのような上限(125%ルール)が設定されていません。
ですので、10年間で基準金利が上がれば、大幅に返済額が増える可能性があるということです。
【関連記事】
変動金利とは?6割の人が選ぶその理由とリスク
まとめ
多くの方は、あまり基準金利や引き下げ金利を意識して住宅ローンを選んでいないと考えられます。
ただ、当初10年固定含めた固定期間選択型の商品では、
11年目以降の基準金利、引き下げ金利が重要です。
また、住宅ローン商品を選ぶ判断材料は、表面上の金利だけではありません。
諸費用や団体信用生命保険の内容など総合的に判断する必要があります。
固定期間選択型の住宅ローン商品を検討される方は参考にしてみてください。
- 10年固定金利ランキングの表面金利で判断してはいけない
- 借入金利は基準金利と引下げ金利(優遇幅)で決まる
- 固定期間終了後の選択肢
- 変動金利になる
- 再度、期間選択型を選ぶ
- 他の金融機関に借り換える
- 固定期間終了後の金利を踏まえて決める