横浜市マンション傾斜問題

横浜市で起きた「マンション傾斜問題」から、マンション管理組合の活動について考えました。

この問題の経緯の概要は以下の通りです。

マンションの概要

・物件名称:パークシティLaLa横浜
・2007年11月完成。
・4棟 地上12階705戸。
・販売元:三井不動産レジデンシャル
・施工元請:三井住友建設
・杭打ち工事:旭化成建材(旭化成子会社)

以下、2016年2月5日のダイヤモンドオンラインの記事を参考に、経緯を要約させて頂きました。

2014年9月 マンションの異変に気付く

マンションの管理組合の理事の1人が、修繕に必要な箇所をチェックをする際、中央棟と西棟をつなぐ渡り廊下の手すりの位置が下がって(ずれて)いることに気づく。

これを販売元の三井不動産レジデンシャルに伝えたときの回答。
⇒「東日本大震災の影響」

ただ、当時震度5弱程度の地震でこれほどのゆがみが生じるか疑問に思い、マンション管理組合向けのコンサルティング会社「ソーシャルジャッジメントシステム」(SJS)に相談されました。

2014年11月 マンション販売元に調査依頼

改めて三井不動産レジデンシャルに調査を依頼。

2014年12月 マンション販売元からの回答

三井不動産レジデンシャルの回答。
⇒(地震による)中央棟と西棟の揺れ方の違いによって、エキスパンションジョイント部に生じたひずみ

エキスパンションジョイントとは、
「地震や温度伸縮等による構造物の変形から建築物を守るために設ける、部材相互を分離する接合部」(EPS建材関連用語集)
→地震などで違う動きをする建物の変形、衝突を緩和する部材です

ただ、全ての階でズレが見られ、また上階に行くほどズレが大きくなっていることから、管理組合はこの回答に到底納得できませんでした。

2015年2月 販売元と施工会社に施工記録の提出を求める

管理組合は、販売元の三井不動産レジデンシャルと施工会社の三井住友建設に、施工記録の提出と閲覧を求めました。

この時もしつこく要求するもののなかなか見せてもらうことはできなかったようです。

その間に、三井不動産レジデンシャルと三井住友建設は、地盤調査、ボーリング調査を実施。

この調査方法について、建物診断を行う評価機関である一般社団法人建築研究振興協会へ評価依頼する許可を管理組合に求める。

管理組合側はこれを了承。

三井不動産レジデンシャルと三井住友建設は、月1回ペースで建築研究振興協会と会合を開催。但し、管理組合側を参加は認められず。

2015年8月 マンション管理組合が横浜市へ相談

管理組合が横浜市に相談。

この時点でようやく管理組合が施工記録を閲覧できる。

そのとき、

・三井不動産レジデンシャル
・三井住友建設
・(杭打ち工事を行った)旭化成建材

からそれぞれ2名が出席。

このとき同席したSJSの担当者が、杭工事のデータの不自然さを見つける

→杭工事のデータについて質問するが、三井住友建設の担当者から確な説明なし。

旭化成建材の担当者に聞こうとすれば、三井住友建設の担当者が、「全ての話は私を通して下さい」と遮るような対応だったようです。

最初に異変に気付いてから、この時点で1年が経過しています。

2015年9月 販売元から杭工事の施工不良の報告

三井不動産レジデンシャルが、マンション理事会で
「西棟の杭の6本は強固な支持層に届かず、2本は食い込みが不十分である」と報告。

2015年10月 杭工事の施工記録データの改ざんが発覚

さらに、杭工事の施工記録データに改ざんがあったことが報告される。

この3時間後、マンション理事会の確認を得ることなく、三井不動産レジデンシャルから住民説明会の案内文を各戸へ配布。

問題発覚後、最初の住民説明会 開催。

三井不動産レジデンシャルの役員出席はなく、補償は不具合のある基礎の補修にとどまるとの説明。

2015年10月14日 メディアによる報道

日本経済新聞がこのマンションの問題をスクープ報道。

横浜市が相談を受けていることを公表し、各メディアも一斉報道。

2015年10月15日 住民説明会の開催

住民説明会開催。

三井不動産レジデンシャル、三井住友建設の社長が出席・謝罪。

全4棟の建替えを住民に説明。完全な補償を認める。

マンション建て替えに向けすすんでいく

販売元が完全な補償を認めたものの、管理組合の戦いは終わりではなくまだまだ続きます。

今後の管理組合の建替えへ向けたスケジュールは、住民全戸のアンケート結果をもとに理事会を開催し、これからの方向性を決めるそうです。

2016年2月末に総会で建替えの方針を決議し、9月の総会で建替え決議をする予定。

区分所有法では、
建替えには区分所有者数ならびに議決権数の4/5以上の賛成が必要となっています。

2012年12月(予定)に建替組合を設立し、その後マンションの解体と着工。

新しいマンションが竣工するのは、最短で2020年予定。
東京オリンピックに間に合うかどうかという時期です。

ここまで、ダイヤモンドオンラインの記事から抜粋させて頂きました。

この問題で考えたこと

このマンション傾斜問題ではいろいろと考えさせられることもありました。

マンション管理組合は大切

マンションは管理を買えと言われますが、このマンション管理組合は修繕計画をしっかりと作成されており、修繕箇所をチェックする中で今回の問題箇所を発見されました。

また、それ以降も理事の方はじめ、マンション管理組合がしっかりと対応されているなと思いました。

第3者機関の活用

併せて、第3者機関(ソーシャルジャッジメントシステム)をうまく活用されたと思います。

一方、時間的、費用的な制約があったので仕方がなかったと思いますが、建物診断を評価する機関として、販売会社が依頼した機関(建築研究振興協会)を活用することは、建物診断に必要な客観性を担保するには不十分だったかもしれません。

この記事を見る限りでは、杭工事のデータの不自然さを指摘したのは、建築研究振興協会ではなく、管理組合が依頼した第3者機関というようになっています。

建物調査や耐震診断では、中立な調査・判断が必要とされます。

我々が家を買う際に利用する際も、できる限り第3者的な立場で依頼する方が良いです。

ちなみに、建築研究振興協会の業務内容として、第3者機関として建物診断を行うとホームページにも記載されていますが、役員には大手ゼネコン役員の名前が並んでいたりします。

この問題は、建設業界の仕組み(元請けと下請けの関係など)や慣習など、建設業界のいろいろな問題が含まれていそうです。

安全性より利益、販売計画、工期を優先したと言われても仕方がありません。

マンションブランドの価値

また、マンション販売会社のブランドについても考えさせられました。

マンションを選ぶとき、デベロッパーや販売会社などをが判断材料の1つになっていることは少なくないです。

タワーマンションなどであれば、施工会社や施工実績なども判断することがあります。

このマンションを購入した人の中にも、「三井不動産」というブランドの信頼性が購入の決断に影響した人もいると思います。

マンションだけでなく、一戸建て住宅でも、地元の工務店より大手ハウスメーカーのブランドや信頼性を感じて購入したり建てられる方も少なくありません。

今回の事件は、そういったブランドとそれに見合う価値について考えさせられる事件でもあります。

どんな立派な建物や設備や環境でも、今の時代、安全性が確保されていない商品は選ばれません。

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ちなみにこのマンション、国交省が後援する「土地活用モデル大賞」受賞という国交省お墨付きのマンションだったようです…。

また、この問題が発覚してからの販売会社、施工会社の対応がひどいです。

マスコミが取り上げた途端に、全てを認め、謝罪、補償するという企業姿勢。

消費者に対してというより自社を守るための対応という指摘がありますが、そう思われても仕方ないです。

マンションを買うときにできること

厳しい言い方になってしまいますが、このマンションを購入した方は、結果的に欠陥住宅をつかんだということです。

購入時に欠陥に気づき、購入を見送ることは無理だったはずです。

ただ、この事件を通して、これから住宅を購入する人ができることはいろいろあります。

マンション管理組合が機能しているかを確認

  • 理事会・総会の開催状況
  • 長期修繕計画の策定
  • 敷地内の清掃や防犯面
  • 共用部の管理
  • 掲示板の状況 など

管理組合が成立していない新築マンションでは難しいですが、中古マンションを購入する場合、管理組合がしっかりと機能しているかを確認することは重要です。

横浜の問題でも、もし管理組合がしっかり機能していなければ、問題の発覚はさらに遅れていたかもしれません。

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購入時の物件チェックのやり方

横浜のマンションの住民の方からは、

「窓枠がゆがんでいる」
「玄関ドアが開きにくい」
「天井にひびが入っている」
「マンション周辺の地面がくぼんでいる」

という声が上がっていたそうです。

こういった状況をマンションを購入する場合でも、しっかりと確認することが重要です。

もし気になる点がある場合は、仲介会社などを通じて、原因やそういった問題が他にないかなど管理人や管理組合含め確認することが大切です。

また、その問題について管理組合として対応するものなのか、個人で対応すべきものなのかなども確認が必要です。

建物診断(ホームインスペクション)の活用

建物や構造の状態について、場合によっては建物診断を活用することもありです。

購入時の状況や売主の対応によって、必ずできるわけではありませんが、建築士などの専門家に依頼し、欠陥や補修箇所はないか、リフォームにいくらかかるか、などを事前に把握するために実施するものです。

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