中古住宅の価格と取引状況
中古住宅を購入しようとするときに、もっとも気になるのが築年数です。
・中古住宅取引の現状
・築年数によって何が違うか
・築年数とお金の関係
についてまとめました。
近畿圏の中古住宅の取引状況
中古マンションの成約価格の推移
下のグラフは、近畿圏の地域別の中古マンション価格の推移を表したものです。
金融緩和、住宅ローンの低金利の影響もあり、年々価格は上昇しています。
都市や地域によって価格に大きな違いはありますが、2020年度の成約価格の平均は2,366万円(平均専有面積69.67㎡)と8年連続で上昇しています。

築年数別のマンション成約価格の下落率
築年数 | ㎡単価 (1㎡当たりの価格) | 下落率※ |
---|---|---|
~築5年 | 59.01万円 | – |
築6年~10年 | 45.56万円 | 約23% |
築11年~15年 | 43.32万円 | 約6% |
築16年~20年 | 34.16万円 | 約21% |
築21年~25年 | 23.99万円 | 約30% |
築26年~30年 | 20.03万円 | 約17% |
築31年~35年 | 22.05万円 | – |
築36年~ | 18.19万円 | – |
下落率をみると、
築5年から築10年にかけて大きく下落(23%)している一方、築10年から15年にかけては6%の下落率にとどまっています。
築年数別の中古マンション成約状況
下表は、2020年度の築年数別の取引件数の割合を示したものです。
築年数 | 成約件数の割合 |
---|---|
0~5年 | 6.7% |
6~10年 | 9.4% |
11~15年 | 12.9% |
16~20年 | 12.9% |
21~25年 | 13.2% |
26~30年 | 9.6% |
31~35年 | 9.5% |
36年以上 | 25.8% |
築浅の中古マンションの流通量が少ないこともありますが、築10年までの中古マンションが約16%、一方、築36年を超える取引が25.8%と全体の4分の1を占めています。
投資用の不動産売買の成約件数が多く含まれてると考えられます。
近畿圏の中古戸建ての取引状況
中古戸建ての成約価格動向

こちらも都市や地域によって価格に大きな違いはありますが、2020年度の平均成約価格は、1,879万円(平均専有面積69.67㎡)です。
中古マンションと異なり、2年連続で下落しています。
築年数別の中古戸建て成約状況
築年数 | 成約件数の割合 |
---|---|
0~5年 | 6.0% |
6~10年 | 7.7% |
11~15年 | 9.6% |
16~20年 | 11.3% |
21~25年 | 14.3% |
26~30年 | 10.4% |
31~35年 | 10.2% |
36年以上 | 30.5% |
木造住宅の場合、税法上の耐用年数は22年とされています。
ただ、実際の耐用年数は、使われ方やメンテナンスをしっかり行うことで、30年以上でも十分に住むことができます。
日本は欧米などと比べ、不動産市場が新築中心で、既存(中古)住宅の流通量に占める割合は2割程度です。
ですので、中古住宅取引が当たり前の欧米と比べ、日本は、中古住宅の価格や評価に築年数は大きく影響します。
ただ、築年数が浅くても、もともとの住宅性能が低かったり、施工、メンテナンス状態が悪ければ評価が低くなることもあります。
逆に、築年数が経っていても、もともとの建物の性能が高く、メンテナンスがしっかりされていれば、築年数以上の評価される物件もあります。

築年数で違う耐震基準や性能

中古物件を見るときに築年数はチェックされると思いますが、
建てられた時期(築年数)によって建物の耐震性や性能が異なります。
そこで過去の建築基準法など法改正、法施行を以下に挙げてみました。
1981年(昭和56年)6月
旧耐震機銃から新耐震基準へ
建築基準法の改正により新耐震基準に変わりました。
新耐震基準では、
- 震度5強程度の地震ではほとんど損傷しない
- 震度6強から7に達する程度の地震で倒壊・崩壊しない
耐震性能が求められました。
平成7年の阪神淡路大震災の被害状況でも、旧耐震基準と新耐震基準の建物の差は統計的にも表れています。
新耐震基準が適用される建物は、
1981年6月1日以降に確認申請を受けたです。
※マンションなどは建築工期が1年以上必要ですので、1981年以降引渡しの建物でも旧耐震基準である可能性があります。
微妙な時期は確認が必要です。
2000年(平成12年)4月
住宅の品質確保の促進等に関する法律
「住宅の品質確保の促進等に関する法律」施行。
1,住宅性能表示制度
2,10年間の瑕疵担保責任の義務付け
2000年4月1日以降、締結された新築住宅の売主や建築主に対して、
「構造耐力上主要な部分」および「雨水の侵入を防止する部分」について、引渡しから10年間、契約不適合責任(瑕疵担保責任)を義務づけられました。
瑕疵担保責任とは、引渡しされた建物の種類や品質について、契約内容に適合しない場合、買主もしくは注文主に対して負う責任です。
つまり、2000年4月以降の物件については、こういった制度、責任の元作られているという意味で、それ以前と比べると信頼性は高いといえます。
2000年(平成12年)6月
木造住宅の地盤調査の事実上義務化等
建築基準法が改正され、木造住宅の耐震性が強化されました。
地耐力に応じた基礎構造が規定
木造住宅の基礎の形状を建物の地盤の地耐力に合わせなければならなくなり、実質的に地盤調査が義務化されました。
地耐力とは、
地盤がどのくらいの荷重に耐えうるかを示す指標。
耐力壁の量と配置の計算が規定
建物の耐震性確保のため、耐力壁の量と配置のバランスについて、計算が必要となりました。
継手・仕口の仕様を特定
住宅崩壊の主原因の1つとして、柱の足元や頭が基礎や梁から引き抜かれてしまうことが挙げられます。
それを防止するため、使用する筋交い、止め金具の仕様などが決められました。
住宅の耐震性については、
1981年の改正と2000年の改正(木造住宅)が大きな分岐点といえます。
2003年(平成15年)7月
シックハウス対策の義務化
建築基準法が改正され、シックハウス対策が義務化。
当時「シックハウス症候群」といって、住宅の気密化・断熱化が高度になると同時に、新建材と呼ばれる化学物質を含有した材料を使うことにより、室内の空気が化学物質などに汚染され、人体に悪影響を与える症状が問題となりました。
シックハウス対策の内容
この改正により、2003年7月1日以降に着工する住宅に対して、
- 規制対象とする化学物質の明確化。
→特定の化学物質を含む建材の使用禁止。 - (代表的な化学物質である)ホルムアルデヒドを発散する内装材の制限
- 24時間換気システムの義務付け
などが規定されました。
ただし、この改正で規制される物質は、
「ホルムアルデヒド」「クロルピリホス」です。
空気汚染の原因となる物質全てが規制されたわけではありません。
2007年(平成19年)6月
建築基準法ならびに建築士法の改正
2005年に発覚した構造計算の偽装問題をきっかけに建築基準法および建築士法が改正されました。
改正の内容
一定の高さ以上の建築物について、
- 建築確認・検査の厳格化
- 建築確認や審査を行う民間検査機関に対する指導監督の強化
- 建築士に対する罰則強化
第三者機関の専門家による構造審査(ピアチェック)や特定の住宅に対する中間検査が義務付けられました。
2009年(平成21年)6月
長期優良住宅の普及に関する法律
「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」施行。
法律の内容
- 耐震性
- 劣化対策
- 維持管理・更新の容易性
- 可変性(共同住宅)
- 住戸面積(一戸建て75㎡以上など)
- 省エネルギー性 ※断熱等性能等級4など
- 居住環境
- 維持保全管理※少なくとも10年ごとに点検を実施
などので一定の条件を満たした建物は、長期優良住宅として認定され、税制面や住宅ローンにおいて優遇措置が受けられることになりました。
以上がこれまでの主な法改正の経緯です。
このように中古住宅を購入するとき、建てられた時期によってどういった法律や基準のもとで建てられたかが分かると、中古住宅選びの1つの判断材料になりうります。
築年数と税制・メンテナンス
耐震性や性能以外の税制や維持費の面から築年数から考えてみました。
住宅ローン控除と築年数
中古住宅で住宅ローン控除を受けるために築年数の要件があります。
・耐火構造(マンション等…築25年以内
・非耐火構造(木造一戸建て等)…築20年以内
築年数の条件を満たさない場合でも、耐震適合証明書や既存住宅売買瑕疵保険などを付保することで、住宅ローン控除の対象とできる場合もあります。
住宅ローン控除は、一定の条件のもと、住宅ローンの借入金額の1%を上限に10年間、所得税、住民税(の一部)が還付される制度です。
住宅コストにも大きく影響しますので、物件選びの1つの基準となりうるものです。
【関連記事】
・2022年以降住宅ローン控除はどうなる?
~2021年(令和3年)度税制改正から~
・住宅ローン控除とは?要件や期間、控除額についてわかりやすく解説
築年数とメンテナンス費用
マンション、戸建てそれぞれ違いがありますが、特に、一戸建ては、外壁や屋根など含め築年数によってはメンテナンス費が必要になる場合があります。
建物の使用の仕方や屋外の環境にもよりますので一概には言えませんが、目安としては以下の通りです。
一戸建て木造住宅のメンテナンス時期の目安
築年数 | メンテナンスの内容 |
---|---|
築10年~ | 外壁の目地(シーリング) |
外壁の塗り替え | |
内装(クロスの張替え) | |
給湯器(品物による) | |
屋根の塗り替え | |
畳(表替え) | |
築20年~ | 外壁の張り替え |
屋根の葺き替え | |
雨樋(点検・交換) | |
フローリングの貼り換え | |
キッチン、トイレ・ユニットバス交換 | |
玄関、窓回りの交換 | |
築30年~ | 給排水管 |
こういったメンテナンスが必要となることを前提に、売主にそれまでの修繕履歴をしっかりと確認することが重要です。
外壁材や屋根材によって、耐用年数は全く異なりますので1つの目安とお考えください。
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中古マンションについては、管理組合で長期修繕計画を作成し、それに基づいて共用部の修繕計画は行われます。
12年~15年に1回、補修箇所を選定しながら行っていくイメージです。
まとめ
ここまで、築年数による建物の耐震性や性能、住宅ローン控除などをコスト面についてみてきました。
築年数は、単に建物や設備の新しさだけでなく、コスト面や安全性、快適性にも関係します。
物件選びの参考にして頂ければと思います。
