はじめに

住宅購入用の資金があまりないという場合でも、諸費用含め、リフォーム費用などの借入ができる金融機関も多く、住宅ローンを借りて家を買うことはできます。

ただ、自己資金、頭金がない場合に注意すべきこともあります。

この記事では、頭金0で住宅ローンを利用するときの3つの注意点をまとめましたので、資金計画、住宅ローン、物件選びの参考として頂ければと思います。

頭金と自己資金の意味

マイホームの資金計画では、「頭金」「自己資金」という似た意味の言葉があります。

本題に入る前に、下記事例でそれぞれの意味を説明します。

【必要資金】
物件価格:3,500万円
・諸費用:  200万円 


【資金計画】  

・自己資金: 700万円
・住宅ローン:3,000万円

この場合、

自己資金は700万円
頭金は500万円

頭金は、物件価格(3,500万円)から住宅ローン(3,000万円)を引いたものを指します。

住宅ローン 頭金なし

マイホーム購入の資金計画で頭金がなしという場合、
先程の事例でいうと、自己資金が200万円以下の場合を指します。

物件価格:3,500万円
 諸費用: 200万円


【諸費用200万円を準備し頭金0円の場合】

自己資金:200万円   
住宅ローン:3,500万円

また、自己資金が100万円しか準備できない場合、諸費用の一部を借入することになります。
この場合も頭金0円といえます。

自己資金:100万円
住宅ローン:3,600万円

頭金0円でも家は買える

頭金0円でも、必要資金の借入ができれば家を買うことはできます。

住宅ローンの借入できる金額は審査で決まり、年収や返済負担率、年齢、完済年齢、健康状態など総合的に判断されますが、必要資金の借入ができれば家は買えます。

民間金融機関の借入可能額

【諸費用200万円を準備し頭金0円の場合】
自己資金:200万円   
住宅ローン:3,500万円

先程の事例で3,500万円の借入をするために目安となる年収はいくらでしょうか。
各金融機関で、審査金利や返済負担率、最低年収など違いがあります。

公表はされていませんが、以下のような
審査金利、返済負担率の金融機関が多いです。

審査金利3%~4%
年収400万円未満400万円以上
基準30%未満35%未満
年収に対する年間総返済額の割合(総返済負担率)

返済負担率は、年収に対する1年間の返済額が占める割合です。
住宅ローン以外の車やカードローンがある場合、それも含みます。

ここから借入可能額を算出すると、

年収500万円:借入可能額 3,528万円
年収490万円:借入可能額 3,458万円


 ※試算条件:審査金利3.5%・ 返済期間35年・元利均等返済

民間金融機関での借入の場合
年収500万円以上であれば、3,500万円借入可能です。

※あくまで年収ベースだけで判断した場合です

フラット35で頭金なしの場合

では、住宅金融支援機構のフラット35では、どうでしょうか。

フラットの審査基準の特徴は、

審査金利が、その月の金利が適用される点です。
その月の金利が1.5%であれば、審査金利も1.5%となります。

つまり、審査金利が低い分、借入可能金額は増えやすいと言えます。

フラットの返済負担率は、以下の通りです。

年収400万円未満400万円以上
基準30%以下35%以下
年収に対する年間総返済額の割合(総返済負担率)

ここから借入可能額を算出すると、

年収400万円:借入可能額 3,756万円
年収390万円:借入可能額 3,138万円


 ※試算条件:審査金利1.59%・返済期間35年・元利均等返済
  (2021年7月 融資率9割超)

他の審査項目が問題なければ、

年収400万円でも、3,500万円以上の借入が可能です

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では頭金0の場合、どういった点に注意すべきでしょうか。

  • 住宅ローンの適用金利
  • 住宅ローン審査への影響
  • 売却や住み替えへの影響

住宅ローン借入金利(返済額)

例えば、フラット35では、融資率によって借入金利が0.26%違います。

融資率適用金利
(2021年7月)
融資率90%以下1.33%
融資率90%超え1.59%
借入期間21年以上35年以下の最優遇金利

フラット35の融資率とは、
住宅の建設費もしくは住宅の購入価額(売買契約書に記載された売買金額)に対する借入金額の割合を言います。

先ほどの例でいうと、
融資率は、3,500万円/3,700万円=94.5%となり90%を超えます。

ですので、この場合の適用金利は1.59%となります。

住宅ローン総返済額の違い

この場合の総返済額の違いを比較すると、

融資率適用金利総返済額(概算)
融資率90%以下1.33%4,379万円
融資率90%超え1.59%4,565万円
総返済額の差186万円
返済期間35年・元利均等返済で試算

つまり、

頭金0円で購入できても、
融資率から適用金利が高くなり、
住宅ローン総返済額が増える

ということです。

これは、フラット35に限らず、他にもソニー銀行など融資率で金利が変わる金融機関はあります。

ちなみに、この事例でいうと、
あと自己資金(頭金)が170万円あれば、
融資率を9割以下に抑えることができ、
適用金利も低くなります。

住宅ローン審査への影響

2点目は、住宅ローン審査への影響です。
住宅ローン審査では、さまざまな項目を総合的に判断されます。

  • 完済時の年齢
  • 健康状態
  • 担保評価
  • 年齢
  • 年収
  • 勤続年数
  • 連帯保証
  • 返済負担率
  • 融資率
  • 雇用形態

返済負担率や融資率も対象となっております。

この点、頭金なしの場合、融資率は高くなります。
資金計画によって、返済負担率も高くなりやすいです。

フラット35のHPには、以下のように明記されています。

「融資率が9割を超える場合は、融資率が9割以下の場合と比較して、ご返済の確実性などをより慎重に審査させていただきます。」

フラット35HPより

ですので、住宅ローン審査は不利に働きます。

担保評価も厳しくなる?

頭金なしの場合、上記審査項目の担保評価でも厳しくなる場合があります。

住宅ローン契約時、金融機関は万一返済ができなくなった場合の担保として、土地建物に抵当権を設定します。

つまり、金融機関の担保評価によって、借入金額が左右されるということです。

先程の例でいうと、

3,500万円の物件に対して担保評価が低ければ、3,500万円の借入が難しくなる可能性がある

ということです。

将来の売却や住み替えへの影響

3つ目は、将来の売却や住み替えじへの影響です。

頭金なしということは、先程の例でいうと、

3,500万円の市場価値のある不動産を
3,500万円のローンを組んで購入する

ということです。

下表は、3,500万円借入した場合の住宅ローン残高の推移(概算額)です。

住宅ローン残高の推移

借入からの期間住宅ローン残高
10年後2,689万円
15年後2,233万円
20年後1,739万円
25年後1,205万円
条件:返済期間35年・元利均等返済・金利1.59%想定

購入から20年後、売却したい

例えば、20年後に家を売却したいとなった場合に、
住宅ローン残高1,739万円に対して、売却価格が下回ると自己資金が必要になります

もし資金が準備できなければ売却できないこともあり得ます。

購入する物件の資産性(資産価値の維持しやすさ)に左右はされますが、

頭金なしで購入した場合、将来的に
住宅ローン残高より物件の市場価値の方が低い
いわゆるオーバーローンの状況になりやすい

ということです。

その結果、売却や住み替えなど人生設計にも影響を与える可能性があるということです。

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まとめ

頭金なし住宅ローンでマイホームを購入する際の注意点を挙げさせて頂きました。

1,住宅ローン金利(返済額)への影響
2,住宅ローン審査への影響
3,将来の売却や住み替えへの影響

また、ここまで頭金なしで購入しても、問題なく返済を続けられる前提で話してきました。

頭金なしで借入ができても、
無理なく返済できるとは限らない

住宅ローン以外の維持費や生活費、将来の必要資金踏まえて、無理なく返済できる資金計画であることを確認してください。

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